「絶対に騙されてるわ!」

鼻息荒くそう息巻く牧子さんは、きっと娘が可愛いんだ。


可愛い娘が、きっと騙されていると疑っている。



「壺とか、変な水とか買ってないか聞いたのよ。そしたらなにも買ってないし、デートはみんな高橋くんが出すらしいの」

「銀行員ですしね」

「それよ!だからね、由梨と結婚して揉みじやの土地を狙ってるんじゃないかと思うのよ」

「いや、それはさすがにないんじゃ?」

「でもそうじゃないとつじつま合わないじゃない!」


どんどん興奮していく牧子さんは、何度も言うようだが、1人娘のことが心配なんだ。


太っている娘とは釣り合わないと、遠回しに言っているようなものだけれど__。



「ちょっと勘ぐりすぎかと?由梨さんはなんて言ってるんですか?」


そうだ。結局は当人たちの問題だ。いくら牧子さんが騒いでも、当人たちがよければ立ち入ることはできない。

「それが、分からないって」


「分からない?」

「そう。なんで高橋くんが__あっ、電話だ」


どうやら揉みじやにお客さんが来たらしい。


「2枚くらい焼けてる?」と、やってきたお客さんの分を買っていき、慌ただしく出ていった。



心配しすぎだと思うけどなぁ?

駆けていく小さな後ろ姿を、僕は見送った。