由梨さんの彼氏は、男の僕から見ても惚れ惚れするくらいだった。
「絶対におかしいわ!」
役柄としては、名探偵だろうか?いや迷探偵か?牧子さんはどうしても解せないようだ。
「私だって、由梨の幸せが1番よ。でもこれはダメ。せめてね、定職に就いてないとか、売れない役者とかならいいのよ」
「えっ、いいんですか?」
「いいのいいの。由梨のほうが食べさせてあげればいいんだから。あの子は立派な腕があるんだから」
「それはそうですけど」
「でもね、この人__高橋くんって言うんだけど、仕事なんだと思う?」
そう言われ、スマホの画面に目を落とすも分からない。
高橋くんの職業なんて、分かるわけがない。
「それがね、銀行員だっていうの」
毒でも浴びた顔をし、牧子さんは2枚目のたい焼きを食べ始めた。
娘の交際相手が銀行員だと知って、ここまで眉をひそめる母親も居ないだろう。
けれど残念なことに、牧子さんの心配も分かる。
この写真だ。高橋さんは優しく微笑んでいるのに対し、由梨さんは__仏頂面だ。しかも、横幅がほぼ倍だった。
牧子さんはこんなにも小さいのに、由梨さんはすくすく育った。
いや、少しばかり育ち過ぎたのかもしれない。