落ち着かないのか、きょろきょろと辺りを見回したり、靴下を上げたり、前髪を直したりと所在なさげだ。
お店じゃ、ハキハキしてるのになぁ?
あっ、あれか。
朝からたい焼き食べるのが恥ずかしいとか?誰かにこんなところを見られでもしたら__というオーラを、美代ちゃんはびんびんに発している。
「学校、楽しい?」
「えっ、はい、普通、かな?」
「いつもお店の手伝い、頑張ってるよね」
「うん。でもバイト代出るし。それなら他のところで働くよりはいいから」
「そっか」
会話が途切れる。
あとなに話そう?『彼氏いる?』とかはセクハラになるかな?部活__は、やってなさそうだしな。
どうしたものかと考えていると「それ」と、美代ちゃんが指差す。
「うん?」
「それって、焼けるんですか?」
『それ』とは、焼き台の前に飾ってある、黒いたい焼きの鉄板だった。
「焼こうと思えば焼けるよ。生地とかは、これ用に作らないといけないけど」
「1枚ずつ焼くんですか?」
「そう。これは【一丁焼き】っていうんだ。昔はみんな、これで1枚1枚、手焼きしてたんだ」
「あんまり焼けないから大変そう」
「うん、その通り」