「たい焼き食いまちゅかー?」
源さんが焼きたてのたい焼きを突き出すも「やけどするだろ!おじちゃんが、高い高いしてやろうか?」と亀さんが立ち上がり、吾郎さんはポケットから煎餅を取り出して食べさせようとする。
「いないいない、ばぁー‼︎」
楽さんが目をひん剥いた顔を、倅に近づけた。
あの鬼瓦みたいな顔、僕なら卒倒するな。
だから火がついたように泣き出すかと思えば、倅くんはきゃっきゃと笑い出す。
「いないいない、ばばぁー‼︎」
四方を取り囲まれ、次から次へと頼んでもいないのに間抜けな顔をさらけだす、還暦を過ぎた一国一城の主たち。
赤ん坊の無垢は、どんな肩書きも取っ払ってしまうんだ。
「可愛いなぁ、おい」
源さん始め、みんな溶けてなくなりそうなくらいベッタリだ。
「おめぇーんとこ、孫4人もいんじゃねーか?」
楽さんが、口に含んでふやふやになった小豆を食べさせながら言った。
いや、だからまだ無理じゃないの?
「んなもん、孫もいいとこ3歳までだな」
「じじぃを金づるにしか思っちゃいないよ」
亀さんは数が多いだけに、言葉に重みがあった。
「よし、おじさんがなんでも買ってやろう!」
吾郎さんが抱っこしたいとせがみ、倅くんを腕の中であやしている。
みんな、とても眩しく微笑んでいるけど__。
その子に将来、お店のガラス全部、叩き割られるんだよ。