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寒さが徐々に本気を出し始める、師走。
やや慌ただしさが漂う大丸商店街には、耳慣れない泣き声が__。
「邪魔するぜぃ」
やってきたのはまだ開店前、いつもの面子で店はたちまち賑やかになる。
「『わだの』と『定森屋』どうなった?」
口火を切ったのは、源さんだ。
「どうもこうも、ぼや騒ぎまでなってよ」
亀さんが声をひそめると「俺んとこなんか煎餅が燃えちまったよ」と、吾郎さんが項垂れる。
この3人のように、みんなが連れ立って仲が良いわけじゃない。
中には、顔を合わせるとツバを吐きかける間柄もあろう。それが隣同士となれば、諍(いさか)いは絶えず起こる。
「それがよ、俺が間に入って手打ちにしてやったんだよ」
そう言って胸を張るのは楽さんで、その楽さんの胸には玉のような可愛らしい赤ん坊が、すっぽりとおさまっていた。
「5枚で、良かったんですか?」
焼きあがったたい焼きは、5枚。
「ちゃんとこいつも数に入れてやんねーとな」
すーっと寝息を立てている、楽さんの倅くん。
「でも、あんまりまだ変わったものあげないほうがいいんじゃ__?」
「てめぇは余計なこと言ってねぇで、焼いてりゃいいんだよ!」
いつもの喝が飛ぶと、ぱちりと目を開けた倅がたちまち泣き始めた。
それはもう、この世の終わりみたいに。