「親子でしか、感じることができない絆__か」


うわ言のように繰り返す楽さんの体に、その言葉が染み渡っていくのが見えるようだった。

「だから、大丈夫だと思います」


さっき僕が言ったセリフとほぼ同じことを、青年が言う。それなのに楽さんは、恫喝するどころか目を潤ませていた。



「兄ちゃん、ありがとな」

肩を叩き、立ち上がる。その顔は、憑き物が取れたみたいに清々しくて__。


「ちょっくら、坊主の顔でも見てくるかな。兄ちゃんのは俺から奢り。あと何枚か焼いてやってくれ」

「いや、そんな__」

「遠慮すんなって。なんだって先輩だからな!」


がはは!と豪快に笑い上げ、お店を出て行った。



あの笑い声、久しぶりに聞いたな。


青年はずっと、楽さんの後ろ姿を見送っている。見えなくなるまでずっと__。



「もう何枚か食べますか?」

「えっ?」

彼が向き直る。


僕が居るのに、初めて気づいたといった風に。食い入るように見つめてくる彼を、僕は見つめ返す。


「良かったんですか?」

「えっ__?」



「もっと他に、言いたいことがあったんじゃないですか?」