「初めて抱いた日は__」

青年はどこか遠くを見ていたけど、少しずつ焦点が戻ってきて__やがて楽さんを捉えた。



「ちょっと、気味が悪かったかな」

「マジか!」

また若返った楽さんは、彼を食いつくさんばかりに詰め寄る。

「確かに嬉しかったけど、それよりも軽すぎるっていうか、抱いた瞬間に鳥肌が立ったし、皺が凄くて可愛いとは思えなくて、でも僕の息子なんで可愛いはずだし、周りは目を輝かせて微笑んでるし」

「分かる。もっと喜べって言われてるみたいでよ」

「そうなんですよ。でもそれとは逆に、体がどんどん冷めていくというか」

「帰りたくて仕方なかった」

「はい、よく分かります」


青年がにっこり微笑んだ。



楽さんは、椅子に深く座り直し、放心したようにぼんやりしている。

聞きたかった答えだからか?


やがて僕に向かって「ほらな」と一言だけ言った。

やや得意げに。


「それで、今はどうなんですか?」

僕がそう尋ねた矢先、楽さんが再び身を乗り出す。



「今は__」

たい焼きを急いでお茶で流し込むと、青年は先に微笑んだ。

「可愛いです」と。


「どんどん僕に似てくるんです。それを言うと親バカだって笑われるんですけど、僕には分かる。血じゃなくて、同じ時間まで分け合った感覚っていうか繋がりっていうか、それはきっと、親子でしか感じることができない絆だと思います」