こ、子供⁉︎
楽さんも、あんぐりと口を開けている。
「兄ちゃん、20歳でガキできたのか?」
「はい。正確にいうと、19歳で。もうすぐ1歳になります」
「マジかよ?」
楽さんの口調が、僅かばかり若返った瞬間だ。
だからどこか落ち着いた感じがしたわけか。2人が並んでいると、不思議な感じがした。子供は同級生なのに、かたやようやく成人したばかりで、もう片方は還暦を迎えた。
こう見ると、楽さんのほうが浮いているように感じる。
だって、楽さん後輩だし。
「兄ちゃん、実は俺もガキが生まれたばかりでよ」
「えっ⁉︎」
今度は、彼があんぐりする番だ。
「まだ赤ん坊でよ、初めて抱いた時どんな気した?」
「初めて、抱いた時?」
「そう。良かったら聞かしてくんねーか?」
前のめりに食いつく楽さんは、誰にも聞けなかったことを聞いているんだ。源さんや亀さんに聞けば秒で済むことなのに、意地が邪魔をしていたに違いない。
たまたまたい焼き屋で会った、見も知らない若い青年になら大丈夫と踏んだのだろう。
「教えてくれ、たい焼き10尾でどうだ?」
「ちょうど10尾焼けそうです」
僕が口添えすると「てめぇは黙ってろ!」と一喝された。