たい焼き『ありき』



「吾郎、てめぇなにコロをダシに使ってんだよ!」

源さんと吾郎さんがリードを引っ張り合う。

せっかく粋に浴衣を着こなしているというのに、そこに亀さんが参戦し、楽さんが大志くんと呆れている。


いやいや楽さん、参加したいくせに。


「私、なんか疲れちゃった。甘いものが食べたいわぁ」

牧子さんが大きな声で言うと、賛同する乙女?たち。


「あたしも、あんこごとごっそりいきたい」

由梨さん、もう太らないほうが__?


「私も、たい焼き屋さんの心のこもったたい焼きが、食・べ・た・い」

いや、マリさんが言うと別の意味に聞こえます。


「私は、あんナシが食べたい」

陽子さん、あれ意外と面倒なんですよ?


「私も2枚、欲しいです」

美代ちゃん、今度は誰と食べるの?



「分かりましたよ。焼けばいいんでしょ、焼けば」

半分、投げやりに言うと『俺も俺もと』と手が挙がる。


こりゃまた大仕事だな。



薄っすら笑いながら、僕は遠くに流れていった笹を見送る。

ゆっくり、ゆっくり流れていく。


僕の願いも乗せて、流れていく。



僕は短冊に、こう認(したた)めたんだ。







【僕のたい焼きで、だれかの心が温かくなりますように】










あらすじ







②ほっこり部門エントリー


大丸商店街にお店を構える【たいやき『ありき』】

そこには毎日、たくさんのひとがやってくる。

近所のお店のひとたちはじめ、なにかを抱えたお客さん。

そんな心の隙間を埋めるため、僕は今日も焼きたてのたい焼きを焼いている。

だってたい焼きには、心を暖かくする力があるか?

でもありきのたい焼きには、ある秘密があって。

食べると__過去か未来にいける。



第1章では、諦めていた子宝に恵まれ戸惑う父と、たい焼き屋にやってきた若い青年の物語。青年が伝えたかったこととは?


第2章では、結婚に踏み切れない女性が「未来に行きたい」とやってきた。果たして彼女は未来に思い描いていた答えを探しに行くのか?


第3章では、商店街を荒らす犬が登場。コロがどうしても懐かず、エサを食べないワケとは?


第4章では、現代に迷い込んできた男性を案内した先には、商店街の歴史があった。


第5章では、子を亡くした母の、長い旅が始まる。過去に戻って子供を守りたい、母の強い思いは届くのか?




作品を評価しよう!

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:9

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作品のキーワード

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア