きっと源さんは、照れ臭かったのだろう。
口は悪いけれど、誰より商店街のことを考えている。
「どっかで一杯やんねーか?」
誰が言ったのか分からない。
ただ『一杯』が瞬く間に広がっていく。急遽『ブルボン』でお疲れ様会が開かれることになり__。
「最高級の霜降り肉、持ってくか」
源さんが言えば「んじゃ、俺もなにかさばいて持ってくか。大志も一杯いくか?」と楽さん。
いや、それは本気で阻止しないと。
「いいマンゴーがあったな」
亀さんもノリ気だ。
「俺も新作の煎餅、持ってくよ」
「えっ、吾郎さん、新作できたんですか?」
僕が食いつくと、笑顔の花を咲かせてポケットをまさぐる。
まさか、持ち歩いてるのか?
「今度は何味なんですか?」
正直、食べるのが怖いが__。
「普通の醤油煎餅だけどな、ちょっとした工夫してあって」
「工夫?」
手渡された煎餅は、たまり色に香ばしく焼けていて、なんら代わり映えしない醤油煎餅のように見えるが__?
「ほら、あれだ。はえ、はえ」
「はえ?」
首を傾げてよく見ると__犬の似顔絵が煎餅に描かれていた。
なるほど、インスタ映えか。