楽さんと大志くんは、お揃いの甚平だった。

赤ちゃん用の小さな甚平がまた可愛くて、商店街のアイドルとなりつつある、大志くん。


みんなが入れ替わり立ち替わり可愛がりにくるけれど__。

それを見るたび、僕は吹きだきそうになる。


だって、だってさ。

みんな、その子に窓ガラス叩き割られるんだよ?



「なんだ、なに笑ってんだ?」

「いえ、今日はありがとうございました」

楽さんに向かって、頭を下げる。


「あっ、亀さんも、暑いのに外でお客さんの相手してもらって」

「俺はなにもしちゃいないよ。1番の立役者はコロだ。なっ?」

コロの頭をがしがし撫でながら、亀さんが言う。


そのリードを握っているのは、あくまで吾郎さんだ。

「もうよ、吾郎の犬でいいんじゃねーか?」


源さんが、諦め口調で「だってこいつ、吾郎の煎餅が1番の好物だろ?」と。

そうなんだ。



コロは芝犬のくせに、源さんのところの特上カルビより、楽さんところの鯛のお頭より、亀さんところのマスクメロンより、1枚の煎餅が好きらしい。


「ほら」と、吾郎さんが取り出した煎餅を、コロはバリバリといい音をさせて食べ始める。

あんな音を立てられちゃ、誰も文句が言えないよね?