「今、30人並んでんぞ?何分くらいかかる?」
外にいた亀さんが首を覗き込むが、枚数が分からないから検討がつかない。
「んなもん、適当に答えとけよ!」と、とんでもないことを言い出す、臨時のレジパート。
「見てらんねーな」
珍しく大志くんを抱いていない楽さんが、中に乗り込んできた。
「俺も焼く」
「いや、無理ですよ」
「同じ魚なんだからイケんだろ?」
変な理屈を押しつけてくるので「あん入れにあんこ入れて下さい!」と指示すると、素直に従った。
あの楽さんが⁉︎
それからも、生地を入れてもらったり、粗熱を取ったたい焼きを運んでもらったりと、ここぞとばかりに雑用を押しつける。
「うわぁ、可愛い!」
さっきから女子が『映(ば)える』とスマホで撮っているのは、吾郎さんが連れたコロだった。
首元に格子柄のスカーフをし、悠然と座っている芝犬はかっこうの被写体らしい。
その横で、吾郎さんが新作煎餅の試作を配っているのが気になるが__。
「ありがとよ!」
源さんの威勢のいい声が響き渡る。
看板娘ならぬ、看板爺の手から放たれるたくさんのたい焼き。
美味しく食べられますように。