七夕祭りは、叫びたいほどの晴天だった。

これまでの雨雲がうそのように晴れ渡り、夏を感じさせる日差しがアーケードに突き刺さる。


朝からお客さんが商店街に押し寄せ、僕も最後の打ち上げ花火を上げるがごとく、たい焼きを焼き続けていた。

これを境に、低迷期に突入する。


だから1枚でも多く売っておきたいが__。



「お待たせしました!」

1人で製造から接客までこなすため、どうしても焼く手が遅くなる。


そうこうしているうちに、お店の前に長蛇の列が出来始めていた。

お客さんの心情として、待てるじかんは30分まで。


でも、列はどこまでも続いている。



嬉しい悲鳴だけれど、本当の悲鳴が出てしまいそうで__。


「おう、邪魔するぜぃ!」



お客さんを押し退けて、いつもの元気な声が聞こえてきた。

いや、今日は無理だって!


源さんを睨んで目配せしたが「なんだ、珍しく忙しいから泣いてんのか?」と通じはしない。



がっくり肩を落として、鉄板を合わせる。

「お嬢ちゃん、何枚だ?2枚?次のあんたは__10枚⁉︎」



なぜかお客さんの注文を取り始めた、源さん。

「早く焼けよ、たい焼き屋」


そう僕にせっついて。