さぁ、残るは楽さんだけ。
楽さんは、赤子の手をひねるくらい簡単だ。
「大志くんの幸せを願えばいいんじゃないですか?」
「大志の幸せかぁ」
「はい。大志くんの立場になって書くのもいいですね。まだ小さいから、代わりに願うとか?」
「たまには良いこと言うじゃねーか」
楽さんが、すらすらと筆を走らせる。
あれだけ悩んでいたのがうそのように、短冊を書き上げる。
【親父みたいに、なれますように】
これにも全員、おし黙る。
いや、未来から来た大志くんは、そんな感じじゃなかったけどなぁ?
まっ、いっか。
楽さんが満足げだし。
「よし、帰るか」と立ち上がる頃を見計らい__。
「焼けました」
次から次へと、たい焼きを網棚に上げていく。
「あれ?注文しませんでしたっけ?」と、素知らぬ顔でどんどん上げていく。
ぴちぴちと、今にも飛び跳ねそうな粋のいい鯛。
「あぁ、このままなら冷めちゃうなぁ。たい焼き屋の願いは焼きたてを食べてもらうこと。熱いうちに食べてもらえたら、たい焼きも本望なんだけどなぁ」
一人芝居をしていると、大きなため息が四つ聞こえてきた。
「おめぇ、商売がうまくなったじゃねーか」
そう言いながら、小銭をあさる源さんに僕はにっこりと笑いかける。
「誰かさんたちに鍛えられたんで」