「ばあちゃん!」
俊也が覆いかぶさっていた。
あの体格が降ってきたら、さぞかし腰を抜かしただろうが、私が孫を猫可愛がりしたのが丸わかりだ。
「おかあさん!」
あかりさんも、俊介を押し退けて泣いてくれている。
肝心のひとり息子は、ぼんやりと立ち尽くしているだけだったが__流す涙は本物だった。
私は、幸せだったんだ。
家族に看取られ逝けるなんて、とても贅沢な終わりかたじゃないか。
私の人生は、幸せだった。
泣き声で埋もれ、ベッドに泣いてすがる家族の後ろ姿を、私は静かに見守っていた__?
ん?
後ろを振り返る。
とんでもなく眩しい光が、病室を照らしたからだ
。
ここ、さっきまで壁がなかったか?
病室の外は廊下のはず?
それなのに黄金の光が、きらきらと天から降ってくる。
やがてなにかの枠組みができあがっていき__目の前に、金色の扉が現れた。
どうして誰も気づかないのか?こんなに眩しいのに、誰も振り向かない。
これは一体、なに?
すーっと静かに両開きの扉が開いていく。
眩(まばゆ)い光が差し、顔を背けていた私は少ししてから、そーっと扉のほうに向き直った。