粉くさいな?
次に瞬きをすると、家族がひとり増えていた。
赤ん坊特有の、我の強い泣き声が響いている。赤ん坊を抱いているのは、私だった。
えっ?と思ったが、少しだけ時が進んだのか。
「あかりさん、まだ休んでていいのよ?こんな時しか甘えられないんだから」
「いえ、体を動かしてたほうがいいので」
三角巾を被るあかりさんは、もうお店に出ているようだ。
「それよりお母さんにお守りさせちゃって」
「いいのいいの。私がお店に出るより、若いあなたのほうがお客さんも喜ぶし。実際みんな、あかりちゃんあかりちゃんって言うから」
「すみません、ちょっと出てきます」
じゃあね、と赤ん坊の頬を指で撫でる。
「あんまり無理いわないでね、俊也」と。
俊也。
私はそーっと仏間に顔を出す。
直也が優しく微笑んでいた。
あなた、叔父さんになったのよ。きっと、名前を一文字とってもらったのね。
みんな、忘れてないの。
こうやって、あなたのことをどこかに刻んで、ともに生きている。
ずっとこの心に、生きている__。
私は、静かにその場をあとにした。
一階のお店をちらっと覗くと、稔がお寿司を握っている。
その後ろで俊介があれこれと動き、あかりさんが笑顔を振りまいていた。
私は『家族』の姿を目に焼きつけ、お店を出た。