長いにらみ合いが続く。
なんなの?
とても感じが悪い。20年、歳を取ったから偏屈になったのか?とにかく感じが悪い。
「どうしますか?焼く都合があるんで」
たい焼き屋の高圧的な物言いが、私の怒りの導火線に火をつけた。
私は普段、怒らない。
けれど稔に言わせるなら、そのぶん、怒った時には手がつけられないという。
だから気づけば私は__。
「焼いてちょうだい」
「分かりました」と、あの特殊な鉄板を掴む。
焼き上がるまでの長い時間、重苦しい沈黙が肩にのし掛かっていた。
それなのにたい焼き屋は、どちらかというと涼しい顔で、たった1枚のたい焼きを焼き上げていく。
未来に行く、たい焼きを。
「1枚で20年までしか行けないんです。それ以上、進むならまたたい焼きを食べないといけない」
そう言って、焼き上がった香ばしいたい焼きを網棚に乗せる。
「くれぐれも、行った世界にとどまらないように」
「未来にとどまる理由なんてないわ」
「ちゃんと残りのたい焼きを食べて戻って下さいね」
「何度も言わなくたって分かってるわよ」
喧嘩腰で返すと、まだ焼きたてのたい焼きを頭からかぶりつく。
叫びたいほど熱かったけど、私はぐっと堪えて噛みちぎった__。