意に反して、黙々と進んでいく葬儀。
今、思い出しても何も覚えていない。私がぼんやりしていても、周りは優しく声を掛けてくれた。稔は私に寄り添い、守ってくれた。
大切なものを亡くしたのだから、と。
でもそうじゃない。そうじゃないんだ。私はただなにも考えられなかった。それだけ。時折、一体なにをしているのだろう?と周りを見回した。
脳が完全に停止していたんだ。
それでも、遺影を決める時には我にかえった。
おかしな写真を使おうとするから、それじゃあんまりにも直也が気の毒だと、私が選んだ。8年間しか選択肢がない、あの子の写真を__。
遺影の直也は、はにかんだ笑顔だった。
私は『未来』に来てしまったんだ。
すでに直也がいない未来に。
そしてそのことを受け入れている未来に。
私にとっては、なんの意味もない未来に。
膝から力が抜け、畳の上にぺたんと座り込む。どれだけ視線をそらしてみても、遺影の中の直也は私に微笑みかける。
ここは、どれくらい先の未来なのだろう?
まだ直也の部屋があるということは、それほど時間が経ってない__?
「えっ?」
私は仏壇に近寄った。
認めたくない、動かない微笑み。その横にいるのは__お義父さん?