ここは家だ。
私と、直也が住み慣れた我が家。
そして手には、頭がないたい焼き。
これは夢じゃない。
笑い飛ばしてもおかしくなかった噂に、藁にすがる思いで飛びついた。
私は、私は過去に戻ってきたんだ!あの子がいる過去に__。
あの子に会える。
過去に戻って、事故を食い止めればいい。
たい焼き屋は「未来は変えられない」と言ったが私は信じない。
絶対に信じない!
お店の2階と3階が住居になっており、居間に立っていた私は、急いで3階に駆け上がる。
「直也!」
名前を呼び、直也の部屋に飛び込んだ。
居ない。学校だろうか?今は何時だ?それとももう、買い物に行ってしまった?
「そんなっ」
今度は慌てて階段を駆け下りた。
止めなくちゃ。
直也を止めなくちゃ!
「直也!」
まだ家の中に居るかもしれないと、最愛のひとり息子を探し回る。
会いたい。
どうしても会いたい。
「直也⁉︎」
仏間の襖を開けた。
そこに、直也がいた。
「どう、して__?」