陽子さんとばっちり目が合う。
火花が散るのが見えた気がした。あの目の奥に見えるのは何だろう?
激しい、怒りじゃないか?
理不尽に、最も大切なものを奪い取られた怒り。
目をそらしちゃいけない。
あの怒りを受け止めなければ__。
「過去に戻って、どうするんですか?」
僕がそう尋ねると、陽子さんははっと目を瞬かせる。
「過去に戻って、直也を止めるの。買い物にさえ行かなかったらあの子は、あの子は助かった」
「未来は変えられません」
「えっ?」
「たとえ過去に戻っても、未来は変えられないんです」
「そんなこと、分からないじゃない。やってみないと、分からないじゃない!」
目を剥いて怒鳴る陽子さんは、僕の知っている陽子さんじゃなかった。
いや、本当の陽子さんを、僕が知らないだけかもしれない。
「あの子に会いたい。ひと目でもいいから、もう一度だけ__」
「過去に行くとは限りません」
陽子さんを貫く思いで、僕は言い切った。
「未来に行く可能性もあります」
「未来に?」
「はい。可能性は半々です」
「でも私、未来になんて用はない。ただあの子に会いたいの」
縋るように身を乗り出す陽子さんを静かに見つめ、僕は一丁焼きの鉄板を手に取った。