毎年、商店街のお店も短冊を書く。
そして七夕祭りのあと、笹流しを行なうのが恒例となっていた。
もう子どもじゃないんだから、叶えたい『夢』なんてない。あったとしても、それを迷いなく書き上げる吾郎さんをどこか羨ましくも思う。
吾郎さんは純粋なんだなぁ。
いや、強欲ともいうか。
「そういやよ、さっき陽子さんがいてな。俺が声かけても聞こえてないのか、ぼんやり笹を見上げてたな」
「俺もこないだ見たな。雨ん中、傘もささずに歩いてた」
源さんと楽さんの言葉どおり、陽子さんがふらふらと歩いている姿が目撃されていた。
それに合わせて、変な噂もある。
おかしな宗教にハマり、壷やら水やら買っていると。証拠は何もないが、さ迷っている様子を見ると、あながち当たっているのかもしれない。
あと、未だに直也くんが生きていると思い込んでいるとも囁かれていた。
それについてはこないだ、たい焼きを買いに来てくれた時から感じていた。
受け入れることができないのだろう。
源さんたちが帰ってからも、雨は降り続いていた。
少し梅雨の晴れ間があったが、今日はまたよく降っている。
あの日のように__。