商店街を、悲しいニュースが襲ってからまだ2週間も経っていなかった。

直也くんが、車に轢かれて亡くなったんだ。


まだ小学2年生だった直也くんは、お店のお使いを頼まれて家を出た。その帰り道に、事故に遭ってしまったんだ。



今日と同じ、雨が降っていた。


直也くんの小さな傘は、かなり遠くまで飛ばされていったらしい。



元気に挨拶ができる直也くん。お寿司が大好きだと言っていた。

たい焼きは好きだけれど、あんこが苦手だったな。


いつも、陽子さんが来ると普通のたい焼きとは別に『あんナシたい焼き』を1枚、必ず注文してくれた。



「確かに俺が声を掛けても、心ここにあらずって感じだったけどよ」

訪問した時の様子を語ってくれる、源さん。


顔色は悪く、最低限の受け答えしかしなかったらしい。



突然、一人息子を亡くした痛みは、僕らには計り知れないだろう。体の一部がもぎ取られる、いや、そんなもんじゃないに違いない。

「なにか、できることないか?」


そう問いかける亀さんも、ちゃんとした答えが返ってくるとは思っていないようだ。



商店街のみんなが、同じ気持ちでいる。

でも雨は、なかなかやんでくれなかった。