「なんだか、買いに行きにくくなっちまったな、タペオカ」
源さんがそうこぼす。
「俺もだよ。あの食感が癖になってきたのに」と亀さんが続く。
「おめーさんは今度、食べてみるか?」
楽さんが大志くんに尋ねているので、それは本格的に阻止しなければいけないと思った。
そして吾郎さんは「タペオカ煎餅」と、小さく呟いている。
「別に買いに行けばいいじゃないですか。これからもお店を応援するんですから」
「そりゃそうだがよ、なんかなぁ。若い娘っ子が1人でやってっから、親身になってみたけどよぉ」
どうしても納得のいかない様子の源さん。
それほど、マリさんにお相手がいるのが気に入らないらしい。
じゃ、そろそろ、爆弾を落としてみるかな?
千枚通しで生地を持ち上げながら、僕は何食わぬ顔で言った。
「若い娘っ子って__マリさん、40過ぎてますよ」
ちらっと見ると、どうやら爆弾は相当な威力があったらしい。
全員が口をあんぐり開けている。
「40だと⁉︎えっ、45?タペオカ屋、45なのか?」
源さんが仰け反って驚いている。
確かに僕も聞いた時にはびっくりした。とてもそんな年には見えなかったからだ。
亀さんも楽さんも、言葉も出ないらしい。
ただ吾郎さんが「べ魔女ってやつか」と、また小さな声で呟いた。
間違いは、正さないでおこう。