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「おめでとう!」
商店街そのものが、2人の門出をお祝いしていた。
大きな舟に乗り、十二単衣を羽織った由梨さんは恥ずかしそうに手を振っている。お内裏様に扮した高橋さんとお似合いの、綺麗なお姫様だ。
それを五人囃子よろしく、源さんたちが追いかけている。
舟はアーケード内を練り歩き、最後に観音様に見守られる中、お菓子を撒く。少しでも幸せをお裾分けするんだ。
だからみんな、スマホのカメラを向けて写真を撮っている。
動画を撮っているひとたちも少なくなく、一様にスマホが掲げられていた。
「由梨!おめでとう!」
人一倍、大声で叫ぶのは牧子さんだ。
ずっと心配していた娘の、晴れ舞台だ。小さい体で跳び上がり、ぶんぶんと手を振っている。
「牧子さん、写真を撮らなくてもいいんですか?」
なんなら僕が、と、スマホを取り出したが「いいの」と、やんわり止められた。
「見てやってよ」
「えっ?」
「写真は誰かが撮ってくれるから、後でいつでも見ることできるし。それより今、あの子のこと見てやって」
「__はい」
僕はスマホをしまった。
この目に、焼き付けるために。