菊池写真館の、お疲れ様会。
ひな祭り結婚式と同時に、こうしてみんなで準備に励んできた。
お店はなくなってしまったけれど、写真はこうしてここに残る。
大丸商店街が生き続ける限り、菊池さんが撮った歴史は、ずっと受け継がれていくんだ。形としてここに飾られて、心に刻まれていく__。
「お疲れさま!」
誰からともなく、声がかかる。
心からの拍手に、菊池さんが頭を下げた。
逃げるように去っていくお店もあれば、こうして惜しまれて去っていくお店もある。商店街に寄り添い、家族を見守り続けてきた菊池さんを、誰もが労う。
と、その時、菊池さんが僕を見た。いや、僕のやや後方を__?
「やばっ、バレた?」
後ろで騒ぐ菊池さん。僕は笑顔で会釈をすると、菊池さんも手を上げて答えてくれた。
「大丈夫ですよ。案外、分からないもんですから」
「そ、そう?でも生きた心地がしない」と、写真館から飛び出していった。
慌てて追いかけると、菊池さんはゆっくりとアーケードを歩いていく。何やら考え込んでいる様子だったが__。
「もう少し、付き合ってもらえませんか?」
僕は菊池さんを連れて、自分のお店に向かう。
中に入ると、お茶の準備をしながら奥に行き、お目当のものを取って戻る。
「これ、見てもらえますか?」
それは1冊のアルバムだった。