アーケードを突き当たった先に、観音様が祀られている。
今日は敷地内にもたくさんの露店が出ていて、祭り囃子が鳴り響いていた。
ちょうど1番奥の角が、大丸商店街の案内所というか、そこで詩吟や俳句、編み物なんかのスクールが定期的に催されていて__。
「実は今日から、ここで案内をするようになったんです」
「案内?」
「はい、大丸商店街の歴史です」
僕が先に入り、菊池さんを迎え入れる。
中はすでに、大勢のひとでいっぱいだった。
「これは__?」
少し目を開き、菊池さんは壁に近づく。壁には、額縁に入った写真が飾られている。
「それは、うちの隣の『きよみや』のじいちゃんから借りたんです」
白黒の焼け野原と、掘っ建て小屋。そこが大丸商店街の始まりだった。
そこから順路に進んでいくと、少しずつ商店街が構築されていく。
「みんな、気前よく写真を貸してくれたそうですよ」
壁一面に貼られた、商店街の歴史を辿ると__。
「これは、俺が?」
家族写真が、壁を埋め尽くしていた。
この商店街で生きてきた、店主や家族たちの写真だ。
そしてそれを撮ったのは、菊池さん。
「あっ、でもここからは知らない」
そこから先は、未来の菊池さんが引き継いだからだ。