「あー…今日もお綺麗な白さですね、お月さま」


アルコール混じりの嫌味。

深夜に近い住宅地に囲まれた公園のブランコをゆらゆらさせて、私は何を八つ当たりな喧嘩をふっかけているのか。

しかも相手は月ときたもんだ。

いや、月になのかな。

月を見上げて、月を非難する様な音を弾くも脳裏に浮かんだのはまるで違う。

『日陽(ひよ)の肌は白いね』

そんな一言が頭と言うより耳の近くでリプレイされて。

まだまだ過去と言うには早すぎる喪失感をジワリと感じ、誤魔化す様に飲みかけの缶ビールを口に運んだ。

「なぁにが、『暗いとこで見たら月みたいで綺麗だ』よ。歯が浮くわ!それとも何か!?だから日陰か夜の間だけの魅力で大人しくしとけってか!?冗談!こちとら名前からして日陰と真逆な日陽なんだぞ!?」

もう、何杯飲んだか定かでないアルコール効果覿面。

夜の公園で酔っ払い、ここに存在しない姿にぶつぶつ文句を連ねている自分は側からみたらどれだけ不快で奇怪な存在か。

それでもさ、今夜くらいは許してほしいのよ。

何せ5年は我慢してきた鬱憤の開放なのだ。

これ以上溜め込むのは限界で、完全に腐り落ちる前に自分で処理に動いたのだから許してほしい。