とにかく、昨夜の自分の粗相に対しての礼と詫びは述べたのだ。

なら、いよいよこの問いかけをしてもいいだろうときちんと体を彼に向ける形でベッドに座り直すと、はっきりとは見えぬ彼の双眸に視線を合わせた。

そうして一息、

「失礼を承知で……どなたでしょうか?」

「………」

僅かにも表情の変化はあったのだろうか?

相も変わらず部屋の扉の前、最初の一言以降音を発していない姿は未だに無表情で感情が読めない。

今程自分が放った失礼な問いかけに対してもだ。

特別な驚愕も見せない姿はただじっと私を見つめ返しているばかり。

それでもスッと動きを見せた大きな手が自分の顔を一撫でしてみせると、

「あー……はいはいはい、」

「……?」

えっ?何?

どういう意味の納得ですか?

勝手に一人で納得して完結しないで欲しいと、答えを求めるように目を細めて見つめ抜くのに。

彼と言えば何かを思案するように明後日の方向を見つめているのだ。

そうして僅か、

「……待ってて」

「はっ?」

言うや否やだ。

こちらの戸惑いなんて背中で見流し、今程入ってきた扉の向こうに消えて行く姿にはただただ唖然。

だって、私の問いかけは?

答えるどころか謎ばかり深めて放置ですか?

なんだこいつ?と怪訝に眉を寄せてしまう私は一般的な感覚だと思うのだ。