触りたいな……。
「っ…………」
「…………あ、」
「……………何?」
「…………いえ、………なんでも」
思わずだ。
思わず……先生の後ろ姿に惹かれてしまって。
思わず伸ばした指先が肩甲骨をなぞってしまった。
当然ピタリと止まった歩みと振り返ってきた先生の意識と。
それに我に返ってしまえば自分の行動に理由が付けづらく気まずい事よ。
気まずいんだけど……。
でも……。
っ____、
「っ……す……き……」
「…………」
「………撃ち落としてくれた……【景品】です」
なんて、取ってつけた言い訳なんだか。
もうとっくに得ている感情を今更口にされても『景品』なんかに値しないとわかっているのに。
ただ、言いたくなっただけの癖に。
それでも素直にそれを弾くのは性分的に堪え切れなくて言い訳に逃げて。
本当は………
「嘘です」
「………嫌いってこと?」
「はっ?………あ、いや、そこじゃなくてっ。……っ……」
「………日陽?」
「っ……」
ああもう……胸の内がグルグルと焦れる。
熱い…。
早く弾いてしまわないと胸の中が大やけどに…。
「『奥さん』」
「………」
「その響きに……沸いて…浮れてしまいました。」
「……」
「浮れて……好きだなって………」
「………」
「先生の奥さんなんだなって……今更実感して……ちょっと…目が回りそうです」
周知するというのは自分もまた再認識するという事なんだな。