「聞いてる? きみに話しかけているんだよ」
耳元で聞こえた声にビクッと体が跳ねた。
ゆるゆると声の聞こえたほうを見れば、見知らぬ男子が立っていた。
すらりとした身長でスリムな体型、やわらかそうなくせっ毛が風に泳いでいる。
これまでも誰かに『話しかけられた』と、喜んだ経験はある。
だけど彼らは私の体 をすり抜けて、後ろにいる誰かと話をはじめるのだ。
そのたびに感じた失望感もやがて薄れ、今では期待なんてしなくなった。
今回もきっと勘違いだろう。
夏風に揺れる山の木々に視線を戻すけれど、やっぱりそこに色は感じられない。
それもどうでもいいことに思えた。
……どうせ地縛霊になれば、なにもかもわからなくなるんだし。
急に視界が翳った気がして顔を上げると、
「きみはなんていう名前?」
目の前に長い足を曲げてしゃがみこむ男子がいた。
彼はまっすぐに私を見ている。
「そうだよ、きみだよ」
「あ……」
久しぶりに出した声はかすれていた。
耳元で聞こえた声にビクッと体が跳ねた。
ゆるゆると声の聞こえたほうを見れば、見知らぬ男子が立っていた。
すらりとした身長でスリムな体型、やわらかそうなくせっ毛が風に泳いでいる。
これまでも誰かに『話しかけられた』と、喜んだ経験はある。
だけど彼らは私の体 をすり抜けて、後ろにいる誰かと話をはじめるのだ。
そのたびに感じた失望感もやがて薄れ、今では期待なんてしなくなった。
今回もきっと勘違いだろう。
夏風に揺れる山の木々に視線を戻すけれど、やっぱりそこに色は感じられない。
それもどうでもいいことに思えた。
……どうせ地縛霊になれば、なにもかもわからなくなるんだし。
急に視界が翳った気がして顔を上げると、
「きみはなんていう名前?」
目の前に長い足を曲げてしゃがみこむ男子がいた。
彼はまっすぐに私を見ている。
「そうだよ、きみだよ」
「あ……」
久しぶりに出した声はかすれていた。