「俺が定期的に邪気を吸い取るにも限界がある。そのうちこの地に捕らわれて地縛霊になるだろう。俺が担当したやつにそんな情けない姿はさせたくない。いや、それよりも俺の成績に響くのは困る。地縛霊になった瞬間に葬ってやるさ」

ふたりの話す声を聞きながら声の主を思い出そうとしても、ぼやけた頭ではなにも浮かんでこなかった。

さっきの女の子の声は誰?  
私はなにを忘れているのだろう。

「僕が協力しますからもう一度、未練解消のチャンスをください」

「それはできないな」

「さっきは同意しかけていたじゃないですか」

「そ、それはお前があまりに熱弁するからその気になっただけだ。霊感があったとしてもたかが人間になにができるっていうんだ」

「そんなのやってみなくちゃわからないじゃないですか? クロさんはやる前にあき らめるタイプなんですか?」

たたみかける輪に、私は目を開ける。
珍しく狼狽した顔を浮かべているクロがいた。

「なっ……お前、バカにするのもいい加減に――」

「だったらやりましょうよ。僕がきちんと光莉の未練を解消させてみせますから」

――『ミンナニダケハシラレタクナイ』