「未練解消の内容もわからないのに、どうやってすればいいの?」

「記憶は戻せるのですか?」

輪がクロに尋ねる。

「本人が努力すればできないことはない。でも、こいつには無理だ。未練解消の内容を思い出したとしてもきっと前のように拒否をする。結局は、ただの弱虫なんだよ」

そうだ、と自分でも思う。
どす黒い感情がお腹のなかにうずを描いていくように広がっている。
未練解消をしてはいけない、したくない。
目を閉じた瞬間、

――『みんなにだけは知られたくない』

また聞こえた声。
今度は自分の声だとすぐにわかった。
未練解消のとき、私がそう思ったってこと?
人に知られてはいけない未練だったの?
記憶の先端をつかみたくて、私はさらに強く目を閉じた。

「もしこのままだと、光莉はどうなるんですか? この黒い糸に飲みこまれちゃうのですか?」