「ようやくしゃべったか」

クロがニヤリと笑ったが、それどころじゃない。
今は輪の発言の意図が気になる。

「僕は光莉を助けたい。なにか手立てはあるはずだよ。それを一緒に見つけようよ」

輪が私を見る瞳は、なんて透き通っているのだろう。
そこになにか希望のような光が見えた気がした。
が、そう思っていないのはクロ。

「アホか。未練解消の期限が過ぎた今、人間ごときになにができるんだ」

「僕は霊感があります。いわば、人間とクロさんをつなぐ役目になれます。エリートのクロさんの汚名を返上できると思います」

「なるほど」

簡単に納得してしまうクロに思わずガクッとなりそうになる。

「私は……、このままでいい」

そう言うと、輪は悲し気な瞳で私を見てくる。

「ダメだよ。光莉だって、本当は苦しいと思うし。地縛霊になる前に未練を解消しなきゃ」

「そんなの無理」

一秒も待たずに答える口からは、夏というのに白い息がゆらゆらのぼっていく。