「自分で探し当てるんですか? それって難しそう」

「記憶を辿れば簡単なこと。だが、こいつは弱虫すぎて思い出す努力もしないんだ。挙句の果てにこんな山奥に逃げこんで、悲劇のヒロインよろしく腐っている」

当てつけがましい言いかたに、思わずにらんでしまう。

「本当のことだから仕方ないだろ。文句あるのか?」

挑むようなクロにまた地面に視線を落とす私。
たしかに何度も未練解消を勧められた。
だけど、どうしてもできなかった。

……今ではその理由すら思い出せないなんて。

「こいつは未練解消をはなから拒否した。四十九日間のタイムリミットに間に合わなかったせいで地縛霊になる数歩手前まできている。人間にできることなんてもうないんだ。わかったら帰れ」

追い払うように冷たく手をヒラヒラさせるクロ。

「このまま地縛霊になるとどうしてクロさんが困るんですか?」

「だからクロって呼ぶなって何度言えばわかるんだよ!」

動じた様子もなく、輪はこめかみに人差し指を当て考えこんでいる。

「未練解消できなくても、それは光莉の問題ですよね? クロさんが気にすることはないように思えます」