「成仏できないからって、人間を味方につけたのか」

言葉を荒らげる案内人に「違うもん」と思わず言いそうになり口を閉ざした。 話をすればせっかく抜き取ってもらった憎しみの感情にまた心が曇ってしまいそう。

「僕が話しかけたんですよ。そうだよね?」

助け舟を出してくれる輪に小さくうなずくけれど、案内人は納得できないようで私の前で仁王立ちになる。

「ふざけるな。人間のほうから地縛霊になりかけているやつに話しかけたりするはずがない。お前、なにをしようとしてたんだ」

声には怒りが含まれていた。

「僕の話を聞いてもらっていただけです。光莉はなにも悪くありません」

話を聞いてもらったのは私も同じなのに、そんなことを言う輪はやさしい人だと思った。

――『光莉はやさしすぎるんだよ』

また、さっきの女の子の声が頭のなかで聞こえた。
どこかで聞いたことのある声だと記憶が騒いでいる。
もう鼓動を止めたはずの心臓がズキンと音を立てた気がした。

思い出したくない。
思い出してはもっと苦しくなるだけ。