さっきまでのつっかえた言葉が嘘のように自然に話ができている。
本当はずっと誰かと話したかったんだ。

「へぇ」

輪が驚いた顔をしているので、私は「でも」と続けた。

「最近は来てない。きっともう、私を見放したんだよ。『未練を解消すればあの世に 行ける』って言われたのに、私はできなかったから」

説明しながら、それは嘘だとわかっていた。
できなかったんじゃない、しなかったのだ。
案内人がいくら未練の解消を勧めてきても、私はかたくなに耳を塞いできたから。

「どうして未練を解消しなかったの?」

「わからない。……忘れちゃった」

ぼそっとつぶやくと糸がまた増えたように思える。
案内人の言う未練に心当たりはあったはず。
だけど、私はそれを実行することを拒否した。
その代償として、私はこの場所に縛られてしまったんだ。
生きていた時代の記憶は、未練解消の期間を過ぎたあたりから急におぼろげになり思い出せなくなっている。

誰とどんな話をしていたのか、部活は?  

クラスメイトは?