「地縛霊か……。僕もたまに見かけるけれど、みんな苦しそうだよ。光莉もそうなっちゃうの?」

心配そうに見てくる輪に首を縦に振る。

「うん。そう教えてもらった」

「誰に?」

「……名前も知らない人がそう教えてくれたの」

輪に会うまでの間、あの人だけが私に話をしてくれた。

「どんな人?」

質問ばかりの輪。やはり年下みたいで、どこかワクワクしたような目をしている。
私に興味があるわけじゃなく、ただ見知らぬ世界への好奇心なのだろう。

「その人は、自分のことを〝案内人〞って言っていた。男性でね、歳は二十代後半くらいかな。全身が真っ黒な人」

「真っ黒ってどういうこと?」

「服もパンツも靴も、羽織っているマントまで真っ黒なの。なによりも、すごく横柄な人なんだよ」

昔はこういう口調でしゃべっていたと、話しながら思い出していた。