昨日は夜遅くまで、瑞希姉ちゃんの部屋でアルバムを見て、2人で雑談をして楽しくすごした。随分、夜も更けてきたので、僕は瑞希姉ちゃんの家から帰ることにする。
瑞枝おばさんと雅之おじさんから「もう夜も遅いし、泊まっていきなさい」という、ありがたいお言葉をいただいたが、僕からすれば、まだ知り合いになって間もない家に泊まるに等しい。だから2人には丁寧にお断りを言って、玄関で「ありごとうございました」と挨拶をし、瑞希姉ちゃんの家を後にした。
そして家に戻ってきた僕は、脱衣所を通り過ぎて、風呂場を開けて、湯舟に張られているお湯の温度を確かめる。少しぬるくなっていた。追い炊きボタンを押して、お湯があたたかくなるのを待つ。その間、リビングへ行って、テレビをつけた。テレビではニュースが流れている。
最近のニュースは残酷なニュースが多いような気がする。
そんなことを想いながら、テレビのニュースをボーっと見る。そろそろ、お湯が温まっただろう。僕は風呂場に行って、手をお湯の中へ浸ける。丁度良い温度だ。2階の自分の部屋へ行って、着替えの衣類を取ってきて、棚に置いて、僕は自分の着てい服を脱いで、風呂場に入る。
家は古いが、風呂場はそれなりにきれいだ。僕は体を洗って、髪の毛を洗って、サッパリした後に、湯舟の中へ首まで入って、今日1日の疲れを取る。
今日は1日は色々なことがあったな。堂本さん達3人とスィーツ店で友達になって、瑞希姉ちゃんの家にお邪魔して、瑞枝おばさんと雅之おじさんとも会って、瑞希姉ちゃんの部屋で、2人でアルバムを見て。
この街に来る前だと、考えられないことばかりだ。色々と楽しいことばかり起こって、僕は嬉しかった。
そんことを考えているうちに、湯舟の中で僕は熟睡してしまった。
「蒼ちゃん、蒼ちゃん、お風呂の中で眠ったら、危ないよ」
誰かが僕に声をかけている。寝ぼけ眼で周りを見たら、まだ、僕は風呂場の湯舟の中にいた。違ったことは瑞希姉ちゃんが頬をピンク色に染めながら、僕の両肩を捕まえて、僕を揺すっていることだ。
「やっと、起きてくれた。湯舟の中で寝ちゃうなんて危ないよ。それに湯あたりしちゃうよ。早く上がってきて」
僕は何がどうなっているのか、まだ、頭の中で考えがまとまらないまま、湯舟から立ち上がった。
「キャーーー!蒼ちゃん。前、前を隠して~!」
僕は呆けた顔で下を向くと下半身を丸出しの状態だった。瑞希姉ちゃんを見ると両手で顔を隠して、指の間から僕の下半身をジーっと見ている。
恥ずかしさのあまり、頭が覚めた。僕は咄嗟に股間を手で隠して、風呂場から逃げるように脱衣所へ走り、バスタオルを腰に巻く。
「なんで瑞希姉ちゃんがここにいるんだよ。僕の下半身、ばっちりと瑞希姉ちゃんに見られたじゃないか~」
僕は絶叫をあげた。誰にも見られたことなんてないのに~。
「私は蒼ちゃんの顔が見たくて、まだ起きてるかな~と思って、家にきただけよ。2階の部屋にもいないし、リビングはテレビがつけっ放しの状態だし、何をしてるんだろうと思って、風呂場を覗いてみたら、蒼ちゃんが風呂場で熟睡してたんじゃない。私だって蒼ちゃんが湯舟の中で熟睡してるのを見つけて、ビックリしたんだから」
瑞穂姉ちゃんが顔を真っ赤にして言い訳をしているが、僕はショックでそれを聞いている余裕はない。
「瑞希ねえちゃん・・・・・・見たでしょう・・・・・・・ばっちりと見たよね?」
「・・・・・・私、蒼ちゃんの・・・は見てないわ・・・・・・大丈夫、私が見てないっていったら見てないから」
そんな言葉を、誰が信じられるっていうんだよ。瑞希姉ちゃん、あからさまに目が泳いでるし、目を僕から逸らしているじゃないか。耳まで顔を真っ赤にして説得力なんてないよ。
「大丈夫・・・・・・いざとなったら私が蒼ちゃんをお婿さんにもらってあげるから、大丈夫よ」
そのフォローなんの意味もないからね。それって瑞希姉ちゃんが見たって証拠じゃん、涙が出てきたよ。
「それより、体のお湯を拭きましょう。このまま裸だと風邪をひいちゃうわ」
瑞希姉ちゃんはバスタオルを棚から取り出して、僕の体を拭こうとする。そんなことしなくていいから。
「いいから瑞希姉ちゃんは脱衣所から出て行って。後は僕が一人で体を拭くから」
瑞希姉ちゃんはちょっと残念そうな顔をして、脱衣所から出て行った。僕は瑞希姉ちゃんから奪ったバスタオルで全身を拭いていく。下半身に巻かれているバスタオルが悲しい。
全身をバスタオルで拭いて、パジャマに着替えた僕は脱いだ私服を丁寧に畳んで、片手に持って、脱衣所から出た。リビングで座っていた瑞希姉ちゃんは、僕が出てくるのを見つけると、テレビのリモコンで電源を消した。
畳んだ私服を持って階段を上って2階の自分の部屋へ入る。私服をタンスに片付けていると、遅れてやってきた瑞希姉ちゃんが、部屋に入ってきて、ベッドに腰かけた。
瑞希姉ちゃんも可愛いパジャマだった。
いつもと違う瑞希姉ちゃんに少し心臓がドキドキしてしまう。
「瑞希姉ちゃん、もう夜も遅いから帰ったほうがいいよ。僕も寝ようと思うし」
「蒼ちゃん、寝るのはいいけど、今日の学校の宿題はできてるの?予習も復習もできてる?」
しまった。今日は瑞希姉ちゃんの家にお邪魔して、遊んでしまったから、学校のことは全くやっていない。
「ほら、やっぱり私が来て、正解じゃない。私が宿題も予習も復習も手伝ってあげるから、早く勉強しましょう」
そう言われると返す言葉がない。正直、僕だけで勉強すると時間がかかりすぎる。ここは瑞希姉ちゃんの提案にのるしかない。
僕は鞄の中から宿題と教科書とノートを取り出して、机に座って勉強にとりかかる。瑞希姉ちゃんは宿題で僕が少しでもつまづくと、優しく丁寧に問題の解き方を教えてくれた。
瑞希姉ちゃん、将来は学校の先生になったほうがいいかも。
僕と瑞希姉ちゃんは順調に宿題を終わらせていく。全ての宿題を終わらせた僕は大きく伸びをして、欠伸をかみころした。凄く眠い。
「今日は宿題だけでいいよ。瑞希姉ちゃんありがとう」
「ダメよ。そんなこと言って、予習と復習を疎かにしちゃ。蒼ちゃんは大学を目指してるんでしょう。頑張って予習と復習をしなくちゃだめだよ。お姉ちゃんも付き合うから、もう少しがんばろう」
瑞希姉ちゃんがにこにこと笑う。なんでそんなに上機嫌なんだろう。でも、瑞希姉ちゃんの言うことは筋が通っている。もう少し頑張るか。
僕は教科書を開いて復習に取りかかる。瑞希姉ちゃんは要点をかいつまんで丁寧に解説してくれる。本当に教えるのが上手いよな。頭にスラスラと入ってくる。僕は順調に復習をこなしていく。復習が終わると予習だ。
予習も瑞穂姉ちゃんが要点を解説してくれるから、僕はウン、ウン、と頷いて要点を聞いて、予習を進めていく・・・・・・段々とまぶたが落ちてきた。
瑞希姉ちゃん・・・・・・僕、もう限界だよ・・・・・・僕は睡魔に負けて机に突っ伏して熟睡してしまった。
◆
とても良い香りが僕を包んでいる。とても良い香り。とても安心する。僕は寝がえりをうって、その香りの元へ抱き着くと、とても柔らかくて暖かい。それにスベスベする。気持ちがいい。僕はまだ眠っていた。
顔のちかくにある膨らみに顔を埋めて頬ずりをする。「あんっ」という声が聞こえたような気がするが、僕は気持ち良すぎて聞こえない。僕はこの気持ちのよい何かを撫で摩る。きれいなS字になった曲線が気持ちいい。また「あんっ」という声が聞こえた。次ははっきりと聞こえた。
僕は慌てて目を覚ますと、耳まで真っ赤にした瑞希姉ちゃんの顔が僕の間近にあった。僕は咄嗟に布団を跳ね飛ばして、瑞希姉ちゃんから距離を取る。よく見ると瑞希姉ちゃんは僕のベッドで、くの字に横になって寝ていた。
では、僕が気持ちいいと思って、顔を埋めて頬ずりしていたのは瑞希姉ちゃんの胸・・・・・・そして僕が気持ちいいと摩っていたのは瑞希姉ちゃんの背中だったのか。なんて恥ずかしいことをしてしまったんだ~。
「蒼ちゃん、おはよう。甘えてくる蒼ちゃんって、とっても可愛かったよ」
耳まで真っ赤になった瑞希姉ちゃんがベッドに正座して、モジモジしている。
「蒼ちゃん、寝ていたから仕方ないけど、いろいろな所を撫でるんだもん。お姉ちゃん、ちょっと恥ずかしかった」
僕の頭はボンと爆発しそうだった。寝ていたとはいえ、女子の体を触りまくるなんて、頭がクラクラする。
「どうして、瑞希姉ちゃんが僕のベッドで寝ているの。昨日、僕はどうなったの」
「昨日、勉強をしていて、復習が終わって、予習をしている最中に机で、蒼ちゃんが寝ちゃったの。だから、蒼ちゃんをベッドに移して、私も一緒に蒼ちゃんのベッドで寝ちゃった・・・・・・テヘヘ」
瑞希姉ちゃんは口から少し舌先を出して笑っている。机で寝落ちしてしまったのは自分のミスだ、それをベッドまで運んでくれたことは感謝する。でも、なぜ瑞希姉ちゃんが僕のベッドで寝ることになってんの。
「瑞希姉ちゃん、僕の家に泊まったりしたら、瑞枝おばさんも雅之おじさんも心配するでしょ。どうせ2人の許可も取ってないんでしょ。こんなことしちゃダメだよ。瑞希お姉ちゃんも年頃の女子なんだから」
「私の両親は大丈夫だよ。蒼ちゃんの家に行ってることはわかってるし。何の問題もなし」
俺って、瑞枝おばさんと雅之おじさんから信頼されすぎだと思う。可愛い娘なんだからもっと、管理は徹底してもらいたい。
「まだ、6時だから少し早いけど、おはよう。私、自分の部屋へ行って、制服に着替えてくるね」と瑞希姉ちゃんは言って、僕の部屋から出て行った。
まだ6時なのか、ちょっと早起きしすぎたな。それにしても、あ~驚いた。こんなに寝起きからビックリしたのは初めてだ。
それにしても良い香りだったな。とても安心して熟睡したような気する。あんなに女子の体って柔らかくて暖かくて・・・・・・僕は朝から何を考えてるんだ。時間もまだあるし、もう一度寝よう。そして、いつもと同じ朝を迎えよう。
僕は跳ねのけた布団を戻して、布団の中へ潜って眠りにつく。まだ瑞希姉ちゃんの残り香が布団に残っていて、少し胸がドキドキする。そして良い匂いに包まれて、段々と睡魔に襲われて、僕は眠りにつく。
◆
「蒼ちゃん、時間だよ。早くおきないと朝食を食べる時間がなくなるよ」
僕は肩を揺すられて目が覚めた。制服に着替えた瑞希姉ちゃんが僕の体を揺すっている。
「あ、瑞希姉ちゃん、おはよう」
「はい、おはようございます。蒼ちゃん、早く制服に着替えてね。今日、学校にいく荷物も鞄の中へ入れるのを忘れないでね。お姉ちゃんは台所にいるから。用意ができたら1階に降りてきてね」
瑞穂姉ちゃんはにっこり笑うと、僕から手を放して、部屋から出て行った。階段を降りていく音がする。
のろのろとベッドから降りて、パジャマを脱いで、制服に着替えて、今日、学校で使うノート、教科書、参考書などを確認して鞄の中へ詰め込んでいく。
やっと、学校に行く用意ができた。僕は自分の部屋を出て、階段を降りて、リビングに鞄を置いて、洗面所へ行って、顔を洗って、歯を磨いて、整髪をして鏡で自分を確認する。
眉近くまである長くて細い髪。切れ長の奥二重のまぶたに少し茶系の瞳。長くて多めなまつ毛。少し低い鼻、普通の人より小さい顔が鏡に映る。僕は自分の顔があまり好きではない。体形も。少し、髪の毛が長くなってくると女子に間違われることがあるからだ。自分の顔を見ていると、ため息が出る。
悠みたいにもっと精悍な顔つきに生まれたかった。全然、男らしくない。肩もなで肩だし・・・・・・あんまり深刻に悩むのは止めよう。一生、付き合わないといけない、顔と体だもんね。僕が好きになってあげないとな。
短髪が完全に似合わないから、僕は仕方なく髪の毛は長めに残している。
僕は洗面所からリビングへ戻って、台所を見ると、鼻歌を歌いながら、瑞希姉ちゃんがエプロンをつけて、朝食を作ってくれていたようだ。僕がやってきたのがわかったのか、クルリと振り返ってにっこりと笑う。
「今日も蒼ちゃん、可愛いね。朝食の用意ができたよ。一緒に食べよう」
テーブルの上には、焼き魚、卵焼き、みそ汁、漬物、ご飯が並んでいた。今日も美味しそうだ。
僕がテーブルに座ると、瑞希姉ちゃんも対面の席に座る。2人で静かに朝食を食べる。本当に美味しいな。朝はあまりお腹が空かない僕でもペロリと朝食を全て食べてしまった。だって美味しいんだもん。
2人揃って「ごちそうさま」を言って、朝食の後片付けをする。そして鞄を持って玄関で靴を履いている時に、瑞希姉ちゃんが僕の両肩に手を置いた。
「今日1日、蒼ちゃんが頑張れるように、おまじないをしてあげる」
そういって、段々と瑞希姉ちゃんが僕の顔に自分の顔を近づけてくる。朝から何をされるんだろう。ちょっと瑞希姉ちゃん・・・・・・顔が近過ぎるよ。
瑞希姉ちゃんはつま先立ちになって、僕の額そっと触れるようなキスをした。
「はい。おまじない完了」
満面の笑みで瑞希姉ちゃんが宣言する。これで僕は1日中、このことばかり思い出して授業が手に付かないコース決定だ。これじゃあ、1日中、瑞希姉ちゃんの顔を思い出しちゃうよ。どうすればいいんだ。
瑞希姉ちゃんは僕と手をつなぐとにっこり笑って玄関から外へ飛び出した。
瑞枝おばさんと雅之おじさんから「もう夜も遅いし、泊まっていきなさい」という、ありがたいお言葉をいただいたが、僕からすれば、まだ知り合いになって間もない家に泊まるに等しい。だから2人には丁寧にお断りを言って、玄関で「ありごとうございました」と挨拶をし、瑞希姉ちゃんの家を後にした。
そして家に戻ってきた僕は、脱衣所を通り過ぎて、風呂場を開けて、湯舟に張られているお湯の温度を確かめる。少しぬるくなっていた。追い炊きボタンを押して、お湯があたたかくなるのを待つ。その間、リビングへ行って、テレビをつけた。テレビではニュースが流れている。
最近のニュースは残酷なニュースが多いような気がする。
そんなことを想いながら、テレビのニュースをボーっと見る。そろそろ、お湯が温まっただろう。僕は風呂場に行って、手をお湯の中へ浸ける。丁度良い温度だ。2階の自分の部屋へ行って、着替えの衣類を取ってきて、棚に置いて、僕は自分の着てい服を脱いで、風呂場に入る。
家は古いが、風呂場はそれなりにきれいだ。僕は体を洗って、髪の毛を洗って、サッパリした後に、湯舟の中へ首まで入って、今日1日の疲れを取る。
今日は1日は色々なことがあったな。堂本さん達3人とスィーツ店で友達になって、瑞希姉ちゃんの家にお邪魔して、瑞枝おばさんと雅之おじさんとも会って、瑞希姉ちゃんの部屋で、2人でアルバムを見て。
この街に来る前だと、考えられないことばかりだ。色々と楽しいことばかり起こって、僕は嬉しかった。
そんことを考えているうちに、湯舟の中で僕は熟睡してしまった。
「蒼ちゃん、蒼ちゃん、お風呂の中で眠ったら、危ないよ」
誰かが僕に声をかけている。寝ぼけ眼で周りを見たら、まだ、僕は風呂場の湯舟の中にいた。違ったことは瑞希姉ちゃんが頬をピンク色に染めながら、僕の両肩を捕まえて、僕を揺すっていることだ。
「やっと、起きてくれた。湯舟の中で寝ちゃうなんて危ないよ。それに湯あたりしちゃうよ。早く上がってきて」
僕は何がどうなっているのか、まだ、頭の中で考えがまとまらないまま、湯舟から立ち上がった。
「キャーーー!蒼ちゃん。前、前を隠して~!」
僕は呆けた顔で下を向くと下半身を丸出しの状態だった。瑞希姉ちゃんを見ると両手で顔を隠して、指の間から僕の下半身をジーっと見ている。
恥ずかしさのあまり、頭が覚めた。僕は咄嗟に股間を手で隠して、風呂場から逃げるように脱衣所へ走り、バスタオルを腰に巻く。
「なんで瑞希姉ちゃんがここにいるんだよ。僕の下半身、ばっちりと瑞希姉ちゃんに見られたじゃないか~」
僕は絶叫をあげた。誰にも見られたことなんてないのに~。
「私は蒼ちゃんの顔が見たくて、まだ起きてるかな~と思って、家にきただけよ。2階の部屋にもいないし、リビングはテレビがつけっ放しの状態だし、何をしてるんだろうと思って、風呂場を覗いてみたら、蒼ちゃんが風呂場で熟睡してたんじゃない。私だって蒼ちゃんが湯舟の中で熟睡してるのを見つけて、ビックリしたんだから」
瑞穂姉ちゃんが顔を真っ赤にして言い訳をしているが、僕はショックでそれを聞いている余裕はない。
「瑞希ねえちゃん・・・・・・見たでしょう・・・・・・・ばっちりと見たよね?」
「・・・・・・私、蒼ちゃんの・・・は見てないわ・・・・・・大丈夫、私が見てないっていったら見てないから」
そんな言葉を、誰が信じられるっていうんだよ。瑞希姉ちゃん、あからさまに目が泳いでるし、目を僕から逸らしているじゃないか。耳まで顔を真っ赤にして説得力なんてないよ。
「大丈夫・・・・・・いざとなったら私が蒼ちゃんをお婿さんにもらってあげるから、大丈夫よ」
そのフォローなんの意味もないからね。それって瑞希姉ちゃんが見たって証拠じゃん、涙が出てきたよ。
「それより、体のお湯を拭きましょう。このまま裸だと風邪をひいちゃうわ」
瑞希姉ちゃんはバスタオルを棚から取り出して、僕の体を拭こうとする。そんなことしなくていいから。
「いいから瑞希姉ちゃんは脱衣所から出て行って。後は僕が一人で体を拭くから」
瑞希姉ちゃんはちょっと残念そうな顔をして、脱衣所から出て行った。僕は瑞希姉ちゃんから奪ったバスタオルで全身を拭いていく。下半身に巻かれているバスタオルが悲しい。
全身をバスタオルで拭いて、パジャマに着替えた僕は脱いだ私服を丁寧に畳んで、片手に持って、脱衣所から出た。リビングで座っていた瑞希姉ちゃんは、僕が出てくるのを見つけると、テレビのリモコンで電源を消した。
畳んだ私服を持って階段を上って2階の自分の部屋へ入る。私服をタンスに片付けていると、遅れてやってきた瑞希姉ちゃんが、部屋に入ってきて、ベッドに腰かけた。
瑞希姉ちゃんも可愛いパジャマだった。
いつもと違う瑞希姉ちゃんに少し心臓がドキドキしてしまう。
「瑞希姉ちゃん、もう夜も遅いから帰ったほうがいいよ。僕も寝ようと思うし」
「蒼ちゃん、寝るのはいいけど、今日の学校の宿題はできてるの?予習も復習もできてる?」
しまった。今日は瑞希姉ちゃんの家にお邪魔して、遊んでしまったから、学校のことは全くやっていない。
「ほら、やっぱり私が来て、正解じゃない。私が宿題も予習も復習も手伝ってあげるから、早く勉強しましょう」
そう言われると返す言葉がない。正直、僕だけで勉強すると時間がかかりすぎる。ここは瑞希姉ちゃんの提案にのるしかない。
僕は鞄の中から宿題と教科書とノートを取り出して、机に座って勉強にとりかかる。瑞希姉ちゃんは宿題で僕が少しでもつまづくと、優しく丁寧に問題の解き方を教えてくれた。
瑞希姉ちゃん、将来は学校の先生になったほうがいいかも。
僕と瑞希姉ちゃんは順調に宿題を終わらせていく。全ての宿題を終わらせた僕は大きく伸びをして、欠伸をかみころした。凄く眠い。
「今日は宿題だけでいいよ。瑞希姉ちゃんありがとう」
「ダメよ。そんなこと言って、予習と復習を疎かにしちゃ。蒼ちゃんは大学を目指してるんでしょう。頑張って予習と復習をしなくちゃだめだよ。お姉ちゃんも付き合うから、もう少しがんばろう」
瑞希姉ちゃんがにこにこと笑う。なんでそんなに上機嫌なんだろう。でも、瑞希姉ちゃんの言うことは筋が通っている。もう少し頑張るか。
僕は教科書を開いて復習に取りかかる。瑞希姉ちゃんは要点をかいつまんで丁寧に解説してくれる。本当に教えるのが上手いよな。頭にスラスラと入ってくる。僕は順調に復習をこなしていく。復習が終わると予習だ。
予習も瑞穂姉ちゃんが要点を解説してくれるから、僕はウン、ウン、と頷いて要点を聞いて、予習を進めていく・・・・・・段々とまぶたが落ちてきた。
瑞希姉ちゃん・・・・・・僕、もう限界だよ・・・・・・僕は睡魔に負けて机に突っ伏して熟睡してしまった。
◆
とても良い香りが僕を包んでいる。とても良い香り。とても安心する。僕は寝がえりをうって、その香りの元へ抱き着くと、とても柔らかくて暖かい。それにスベスベする。気持ちがいい。僕はまだ眠っていた。
顔のちかくにある膨らみに顔を埋めて頬ずりをする。「あんっ」という声が聞こえたような気がするが、僕は気持ち良すぎて聞こえない。僕はこの気持ちのよい何かを撫で摩る。きれいなS字になった曲線が気持ちいい。また「あんっ」という声が聞こえた。次ははっきりと聞こえた。
僕は慌てて目を覚ますと、耳まで真っ赤にした瑞希姉ちゃんの顔が僕の間近にあった。僕は咄嗟に布団を跳ね飛ばして、瑞希姉ちゃんから距離を取る。よく見ると瑞希姉ちゃんは僕のベッドで、くの字に横になって寝ていた。
では、僕が気持ちいいと思って、顔を埋めて頬ずりしていたのは瑞希姉ちゃんの胸・・・・・・そして僕が気持ちいいと摩っていたのは瑞希姉ちゃんの背中だったのか。なんて恥ずかしいことをしてしまったんだ~。
「蒼ちゃん、おはよう。甘えてくる蒼ちゃんって、とっても可愛かったよ」
耳まで真っ赤になった瑞希姉ちゃんがベッドに正座して、モジモジしている。
「蒼ちゃん、寝ていたから仕方ないけど、いろいろな所を撫でるんだもん。お姉ちゃん、ちょっと恥ずかしかった」
僕の頭はボンと爆発しそうだった。寝ていたとはいえ、女子の体を触りまくるなんて、頭がクラクラする。
「どうして、瑞希姉ちゃんが僕のベッドで寝ているの。昨日、僕はどうなったの」
「昨日、勉強をしていて、復習が終わって、予習をしている最中に机で、蒼ちゃんが寝ちゃったの。だから、蒼ちゃんをベッドに移して、私も一緒に蒼ちゃんのベッドで寝ちゃった・・・・・・テヘヘ」
瑞希姉ちゃんは口から少し舌先を出して笑っている。机で寝落ちしてしまったのは自分のミスだ、それをベッドまで運んでくれたことは感謝する。でも、なぜ瑞希姉ちゃんが僕のベッドで寝ることになってんの。
「瑞希姉ちゃん、僕の家に泊まったりしたら、瑞枝おばさんも雅之おじさんも心配するでしょ。どうせ2人の許可も取ってないんでしょ。こんなことしちゃダメだよ。瑞希お姉ちゃんも年頃の女子なんだから」
「私の両親は大丈夫だよ。蒼ちゃんの家に行ってることはわかってるし。何の問題もなし」
俺って、瑞枝おばさんと雅之おじさんから信頼されすぎだと思う。可愛い娘なんだからもっと、管理は徹底してもらいたい。
「まだ、6時だから少し早いけど、おはよう。私、自分の部屋へ行って、制服に着替えてくるね」と瑞希姉ちゃんは言って、僕の部屋から出て行った。
まだ6時なのか、ちょっと早起きしすぎたな。それにしても、あ~驚いた。こんなに寝起きからビックリしたのは初めてだ。
それにしても良い香りだったな。とても安心して熟睡したような気する。あんなに女子の体って柔らかくて暖かくて・・・・・・僕は朝から何を考えてるんだ。時間もまだあるし、もう一度寝よう。そして、いつもと同じ朝を迎えよう。
僕は跳ねのけた布団を戻して、布団の中へ潜って眠りにつく。まだ瑞希姉ちゃんの残り香が布団に残っていて、少し胸がドキドキする。そして良い匂いに包まれて、段々と睡魔に襲われて、僕は眠りにつく。
◆
「蒼ちゃん、時間だよ。早くおきないと朝食を食べる時間がなくなるよ」
僕は肩を揺すられて目が覚めた。制服に着替えた瑞希姉ちゃんが僕の体を揺すっている。
「あ、瑞希姉ちゃん、おはよう」
「はい、おはようございます。蒼ちゃん、早く制服に着替えてね。今日、学校にいく荷物も鞄の中へ入れるのを忘れないでね。お姉ちゃんは台所にいるから。用意ができたら1階に降りてきてね」
瑞穂姉ちゃんはにっこり笑うと、僕から手を放して、部屋から出て行った。階段を降りていく音がする。
のろのろとベッドから降りて、パジャマを脱いで、制服に着替えて、今日、学校で使うノート、教科書、参考書などを確認して鞄の中へ詰め込んでいく。
やっと、学校に行く用意ができた。僕は自分の部屋を出て、階段を降りて、リビングに鞄を置いて、洗面所へ行って、顔を洗って、歯を磨いて、整髪をして鏡で自分を確認する。
眉近くまである長くて細い髪。切れ長の奥二重のまぶたに少し茶系の瞳。長くて多めなまつ毛。少し低い鼻、普通の人より小さい顔が鏡に映る。僕は自分の顔があまり好きではない。体形も。少し、髪の毛が長くなってくると女子に間違われることがあるからだ。自分の顔を見ていると、ため息が出る。
悠みたいにもっと精悍な顔つきに生まれたかった。全然、男らしくない。肩もなで肩だし・・・・・・あんまり深刻に悩むのは止めよう。一生、付き合わないといけない、顔と体だもんね。僕が好きになってあげないとな。
短髪が完全に似合わないから、僕は仕方なく髪の毛は長めに残している。
僕は洗面所からリビングへ戻って、台所を見ると、鼻歌を歌いながら、瑞希姉ちゃんがエプロンをつけて、朝食を作ってくれていたようだ。僕がやってきたのがわかったのか、クルリと振り返ってにっこりと笑う。
「今日も蒼ちゃん、可愛いね。朝食の用意ができたよ。一緒に食べよう」
テーブルの上には、焼き魚、卵焼き、みそ汁、漬物、ご飯が並んでいた。今日も美味しそうだ。
僕がテーブルに座ると、瑞希姉ちゃんも対面の席に座る。2人で静かに朝食を食べる。本当に美味しいな。朝はあまりお腹が空かない僕でもペロリと朝食を全て食べてしまった。だって美味しいんだもん。
2人揃って「ごちそうさま」を言って、朝食の後片付けをする。そして鞄を持って玄関で靴を履いている時に、瑞希姉ちゃんが僕の両肩に手を置いた。
「今日1日、蒼ちゃんが頑張れるように、おまじないをしてあげる」
そういって、段々と瑞希姉ちゃんが僕の顔に自分の顔を近づけてくる。朝から何をされるんだろう。ちょっと瑞希姉ちゃん・・・・・・顔が近過ぎるよ。
瑞希姉ちゃんはつま先立ちになって、僕の額そっと触れるようなキスをした。
「はい。おまじない完了」
満面の笑みで瑞希姉ちゃんが宣言する。これで僕は1日中、このことばかり思い出して授業が手に付かないコース決定だ。これじゃあ、1日中、瑞希姉ちゃんの顔を思い出しちゃうよ。どうすればいいんだ。
瑞希姉ちゃんは僕と手をつなぐとにっこり笑って玄関から外へ飛び出した。