とても気持ちいい。頬に柔らかくて暖かいものが顔に当たる。僕は気持ちが良くて、その何かの間に顔を埋める。はぁ~とっても落ち着く。すごく良い香りが僕の鼻をくすぐる。はぁ~良い香りだ~。誰かが僕の背中を優しく撫でてくれている。とても落ち着く。


 どれくらいそうしていただろうか。僕はあまりの気持ち良さと安心感に包まれて、このまま眠っていたかった。


 耳元で誰かが呟く。


『蒼ちゃんは本当は甘えたさん、なんだね~。いっぱい甘えていいからね』


 その聞き慣れた声に、僕は眠りから目を覚める。すると僕は誰かの大きな胸の中で眠っていた。思わず、僕は布団の中から首を出すと、瑞希姉ちゃんの優しい眼差しと目が合った。


 あれ?僕は昨日、瑞希姉ちゃんの家で夕食を食べて、瑞希姉ちゃんと瑞希姉ちゃんの家で勉強して、それからどうなったんだっけ?・・・・・・それから以降を覚えてない。ここはどこ?


 僕は周りをキョロキョロと見回す。見たことのあるぬいぐるみ達、見たことあるカーテン、見たことのある机、・・・・・・ここは瑞希姉ちゃんの部屋だ。僕は瑞希姉ちゃんの部屋で寝ちゃったんだ。


 僕はおそるおそる瑞希姉ちゃんの顔を見る。すると瑞希姉ちゃんが僕の首に両手を回して、にっこりと笑う。


「ここは瑞希姉ちゃんの部屋じゃないか。僕は瑞希姉ちゃんの家で寝ちゃったのはわかるけど、なぜ瑞希姉ちゃんのベッドで寝てるの」


「蒼ちゃんが机で気持ちよく寝ちゃったから、お母さんと話して、私の家に泊めることになったんだよ」


「え、瑞枝おばさんも知ってるってこと?いくらなんでも瑞希姉ちゃんの部屋に僕を泊めちゃあダメでしょう」


 瑞枝おばさんが知ってるってことは、雅之おじさんも知ってるってことだよね。


「お父さんとお母さんは蒼ちゃん用の部屋へ布団を敷いたんだけど、私がベッドに寝かしちゃった・・・・・・テヘヘ」


 舌先を出して、そんな可愛い顔をしてもダメだよ。瑞希姉ちゃんと一緒のベッドに寝ちゃったじゃん。


 布団から抜け出して、自分の恰好を見て泣きそうになった。小さな可愛い柄がプリントされているパジャマ。これって、僕のパジャマじゃないよね。瑞希姉ちゃんのパジャマだよね。なぜ僕が着てるんだ。


「蒼ちゃん着替えるのね。蒼ちゃんの制服ならクローゼットの中に片付けてあるよ~」


「瑞希姉ちゃん。僕が寝てたなら、誰が僕を着替えさせてくれたのかな?」


「私だよ~。蒼ちゃん、可愛かった」


 なぜ、頬をポッと赤く染めてるの。制服脱いだら、僕、パンツ1枚じゃん。瑞希姉ちゃんに僕の体の全部を見られちゃったよ~。もうお婿さんにいけない~。


「蒼ちゃんが、どこへもお婿さんに行かなかったら、お姉ちゃんが蒼ちゃんのお嫁さんになってあげるから、安心して。大丈夫だよ」


 全然、大丈夫じゃないよ。


 部屋のドアが開いて、瑞枝おばさんがヒョイと顔を出す。


「あら、蒼ちゃん、瑞希のパジャマを借りたのね。とっても似合ってて可愛いわよ。蒼ちゃんに用意した部屋に行ったら、蒼ちゃんが寝ていなかったから、瑞希と一緒に寝たんだなと思って、顔を見に来たの。やっぱり瑞希の部屋で一緒に寝ていたのね。本当に仲いいんだから。早く瑞希をお嫁さんにもらってあげてね」


 はぁ、瑞枝おばさん、朝から爆弾を投下するのはやめて~。大切な娘が、男子とベッドで寝てたんだよ。普通に大問題なことですよね・・・・・・瑞希姉ちゃんもなぜ、照れて、体をモジモジさせてんの。あ~、昨日、家に真っすぐ、帰っておけば良かった。


「もうそろそろ学校に行く用意をしなさい。朝食の準備もできたからね。今日は私がお弁当を作っておいたから」


 瑞希姉ちゃんはベッドから起き上がってくると、クローゼットを開けて、僕に制服を渡してくれる。


「私、先に顔を洗いに行ってくるから、その間に制服に着替えて」


 そう言い残して、瑞希姉ちゃんは階段を降りていった。


 僕は瑞希姉ちゃんに借りたパジャマを脱いで丁寧に畳んで、ベッドの上に置いた。そして自分の制服を着ていく。


 何か、僕の制服、良い香りがするぞ・・・・・・そうか、瑞希姉ちゃんの洋服と一緒にクローゼットに入れてあったからだ。


 制服を着て、鞄を持って1階に降りていくと、瑞希姉ちゃんが洗面台の所で待っていた。そして僕に歯ブラシを渡す。ホワイトにブルーの歯ブラシに、油性ペンで「蒼ちゃん」と書かれている。


「これ、蒼ちゃん専用歯ブラシだからね。使ったら、みんなと同じ歯ブラシ立ての中に置いておいて。それじゃあ、私は着替えに行くから。覗きたくなったら見に来てもいいよ。蒼ちゃんだったら大歓迎よ」


 そんな瑞希姉ちゃんの家で、覗きなんてできるわけないじゃん。


 僕は顔を洗って、歯を磨いて、歯ブラシを歯ブラシ立てに置く。リビングへ入っていくと、雅之おじさんはテーブルで新聞を読んでいた。僕の顔を見るとにっこり笑って新聞を畳む。僕もテーブルに座った。


「おはようございます。雅之おじさん、瑞枝おばさん。昨日はご迷惑をかけました。どうもすみません」


「そんな他人行儀な挨拶は止めてくれよ。前にも言ったけど、この家は自分の家を思ってくれていいんだからね。昨日は頑張ったね。瑞枝にきいたけど、寝落ちするまで勉強するなんて、たいしたもんじゃないか」


「そんなことないです。昨日は瑞希姉ちゃんが横で、丁寧に解説してくれたので、ついつい勉強を頑張っちゃっただけで、普段は寝落ちするまで勉強することはないですよ」


 昨日は瑞希姉ちゃんにわからない所を集中して教えてもらえて良かったな。でも僕を教えていたから、瑞希姉ちゃん、受験勉強できなかったんじゃないかな。僕が邪魔したのなら謝らないとな。


「瑞希に勉強を教えてもらえば、必ず蒼ちゃんも成績が伸びるよ。あれでも瑞希は学年トップだからね。いつでも瑞希に勉強を教えてもらいなさい。遠慮はいらないよ。そのほうが瑞希が喜ぶ」


 え、瑞希姉ちゃん、高校3年生でテストの成績、学年トップなの~スゲー。元生徒会長で、学年トップの成績なんて、結構、良い大学を受けることができるんじゃないの。それだから志望大学を決めかねてるんだな。


 瑞希姉ちゃんが制服に着替えて階段を降りてきた。そして僕の隣の席に座る。瑞枝おばさんがテーブルの上に朝食を置いていく。僕と瑞希お姉ちゃんは「いただきます」と言って、朝食を食べる。瑞枝おばさんもテーブルに座って、僕達2人が朝食を食べている姿を見て、ニコニコと笑っている。


「あのね~瑞希が大学を決めない理由を蒼ちゃん知ってる?教えてあげようか。実はね~蒼ちゃんがね・・・・・・」


 瑞希姉ちゃんが席を立って、瑞枝おばさんの口をふさぐ。


「お母さん、それは瑞希から話すから、蒼ちゃんに言っちゃダメ~」


「瑞希からちゃんと蒼ちゃんに言うんだよ~。大事なことなんだから」


 瑞希姉ちゃんは黙って頷いた。顔を真っ赤にしている。


 僕達は朝食を食べ終わって「ごちそうさま」と言って、席を立った。


「僕、今日の授業の用意をしないといけないから、一度、家に帰ります。瑞希姉ちゃん、先に学校に行ってていいよ」


「私は蒼ちゃんを待ってるよ。私も蒼ちゃんの家に行く。お父さん、お母さん、行ってきま~す」


 僕達は瑞希姉ちゃんの家を出て、僕の家に向かった。鍵を開けて、玄関に入る。僕は急いで2階の自分の部屋へ走っていき、部屋へ着くと、受業の予定表を見て、鞄の中身を入れ替える。そして急いで1階へ戻ると、瑞希姉ちゃんは台所のテーブルに座って待っていた。


「瑞希姉ちゃん、お待たせ。学校へ行こう」


 僕達は玄関を出て、鍵をかけて、学校へ向けて歩いていく。学校に行くには時間に十分な余裕があったので、僕達は手を繋いで、ゆっくりと学校へ向かう。


 学校の校舎に着いて、靴箱の所で、瑞希姉ちゃんと別れて、階段を上って自分の教室のドアを開ける。まだ学校に来ているクラスメイトはまばらだ。僕は自分の席に座って、机に突っ伏した。


 悠、蓮、瑛太の3人が教室に入ってきた。つづいて芽衣と莉子が教室に入ってくる。咲良はまだ来ない。


 HRのチャイムが鳴ったと同時に咲良が教室に走り込んできた。顔が真っ赤だ。全力疾走してきたんだろう。ヨロヨロとした足取りで僕の隣まで来て席に座る。息はハァハァといってる。それにしても朝から元気だな。


「今日はどうしたの?」


「昨日の夜、調子に乗って、勉強を遅くまでしたのはいいんだけど、朝寝坊した」


 咲良らしいな。そんなドジな所も微笑ましくて、可愛く感じる。咲良の人徳だね。


 ダル先生が教室に入ってきた。教壇に立って「実力テストの準備はできてるか~。赤点だけは勘弁してくれよ。お前達もショックだろうが、俺も後から居残りに付き合ったりしないといけないんだからな。頼むぞ~みんな。今日は以上だ」それだけ言うと、教室から出ていった。


 咲良が僕のほうを向いて、ヒソヒソと話しかけてくる。


『蒼、今度の日曜日って空いてるかな?』


『日曜日は実力テストの前日で勉強するだけだけど、何かあるの?』


『咲が蒼と遊びたがってるのよ。だから蒼に会いにきてほしいの』


『そっか、咲ちゃんが僕と遊びたがってるのか。それは嬉しいな。咲ちゃん、可愛いし、遊びに行かせてもらうよ。でも、咲良のことを考えると、ただ遊びに行くだけじゃダメだね。勉強会をしよう。咲良の成績が心配だから』


『蒼だったらそう言ってもらえると思った。私からも勉強を教えてって、言うつもりだったんだ~。お願いしま~す』


 咲良がホッと胸を撫で下ろしている。僕は咲ちゃんのツルスベお肌を思い出してニンマリと笑う。


『それより、今日の蒼、ちょっと良い香りしない?私の気のせいかしら?ほんのり良い香りがするのよね』


 ヤバー。瑞希姉ちゃんのクローゼットの匂いだ。こんなの言い訳できないよ。


『そ、そうかな~。気のせいだと思うよ。それより、授業が始まるよ。用意しておかないと先生に怒られるよ』


 咲良は慌てて、鞄の中から勉強道具一式を机の上に置いて、授業の用意を始めた。なんとか誤魔化せた。


 3時間目の受業は体育だった。体育は4組との合同だ。4組の男子が3組に入ってきて、着替えを行う。僕も体操着に着替えて運動場へ行った。最近の体育の受業はランニングというか、長距離走の練習ばかりだ。


 昔から長距離走は得意じゃない。体育自体が苦手なんだけど。でも長距離のベストタイムは早い方だ。だから頑張らなくちゃ。


 女子も同じ長距離だが、僕達よりも距離が短い。


 蓮が僕の近くに寄ってくる。


「女子の体操着姿って、グッと来ないか。女子の足ってなんで、あんなにスラリとしているんだろうな」


「またそんなエロい目で見ていたら、女子から警戒されるぞ。蓮は女子のことしか考えてないの?」


 蓮は何をお前は馬鹿なことを言ってんの、という目で僕を見る。


「俺達は男だよ。そして人間には男の他には女しかいないじゃん。女性に興味を持つのは健全な高校生の当たり前の反応だよ。蒼大には瑞希姉ちゃんがベッタリ引っ付いてるから、わからないんだよ」


 確かにいつも瑞希姉ちゃんと一緒にいることは認めるけど、僕だって年頃の男子だ。女子の体操着には興味はあるよ。でも蓮のようにガン見する勇気がないだけだ。蓮と一緒にするな。


 男子の長距離走が始まった。一応、目標距離は5kmだ。トラックを5km分走ることになる。みんなはダラダラと走り始めた。前のほうに長身の悠が走っている。足取りもしっかりしている。連と瑛太は後ろのほうでゆっくりと走っている。完走するつもりないだろう。


 僕は悠の横に並んで走る。


「蒼は真面目に走るんだな。瑛太と蓮のように後ろで走ってると思ってたよ。あいつ等、ランニングは真面目にやるつもりがないからな」


「僕もランニングは苦手だよ。でもけっこう良いタイムで走れるんだよ。10kmのランニングは初めてだけど。」


「ペースを守れよ。後から疲れるぞ。10kmのランニングは初めてなんだろう」


 僕は悠に手を挙げて、笑って、ペースを上げた。今日は体が軽い。ゆっくりと寝たからだろうか。ペースを守れか。大切なことだよな。注意は素直に受け入れよう。


 走って、5kmのところまで順調だった。やはり5km以上は未知の領域だ。僕はペースを守って、完走することだけ考えて走った。瑛太と蓮は周回遅れになっていた。完走する気はないらしい。


 頭がクラクラする。目が回る。どうしたんだろう。熱中症にでもなったかな。すごく天気が良くて、熱いからな~。まだ、走れる。完走するまで頑張ろう。


 後トラック2周で完走だ。けっこう早い順位で完走できそうだ。頭もフラフラするし、目もクラクラするけど、後2周くらい我慢できる。後ろから悠も迫ってきている。今回は悠には勝ちたいな。


 僕はフラフラしている体に鞭を打って、ラスト2周をダッシュした。遠くから女子の応援が聞こえる。咲良が立ち上がって「蒼~頑張れ~」と声援を送ってくれている。こんな応援をされたらスピードを落とすことはできない。


 僕はラスト2周で数名の男子を抜いて、ゴールした。ゴールと同時にグランドに倒れ込む。もう足の筋肉がピクピクしていて、心臓の鼓動がドッドッドとして立つことができない。僕は少しの間、そのまま、仰向けに倒れていた。


 体育の授業が終わって、男子は整列させられた。先生が前で何かを言ってるが、耳が聞こえなくなったみたいに何も聞こえない。そして立っているだけで地面がユラユラと揺れだした。目がクルクルと回る。頭がクラクラする。立っていられなくなり、僕はその場で倒れた。











 気が付くとベッドの上で寝かされていた。薬品を置いた棚がある。そしてベッドを囲むようにカーテンが引かれている。僕は意識がはっきりしていたので、首を横に回すと咲良が椅子に座っていた。鞄をもっているところから見ると放課後なんだろう。


 僕が意識がはっきりして目を開けたのを確認すると咲良は僕のベッドにしがみ付いて顔を布団に埋める。肩がヒクヒクしいている。どうも泣いているようだ。


「ごめんね。心配かけたよ。10kmを完走できると思って、ペースを上げたのが失敗だった。気絶するなんて恰好悪いところを見せちゃったね。声援、ありがとう。ちゃんと聞こえてたよ」


 咲良は布団で涙を拭くと、顔をあげて無理ににっこりと笑った。


「蒼は馬鹿なんだから~。心配させるな。いきなり倒れた時はビックリしたんだから。悠が保健室まで運んでくれたんだよ。後でお礼を言わないとダメだよ。あ~ビックリした」


「咲良がずっとついていてくれたんだ。ありがとう」


 咲良はゆっくりと首を横に振る。


「ううん。違うの。蒼が倒れてから、ずっと付き添ってたのは瑞希先輩。授業も受けずに、瑞希先輩、ずっと椅子に座って、蒼が起きるまで待ってたんだよ。すごいね。本当は私もそうしたかったんだけど、勇気がなかった」


 僕は布団に仰向けに寝転んだ。また瑞希姉ちゃんに迷惑かけたな。心配させたんだろうな。


「私がね、放課後になって、保健室へ駆けつけたら、瑞希先輩が「蒼ちゃんを見舞ってあげて」って言って、椅子を譲ってくれて、保健室から出てくれたんだよ。なんだか瑞希先輩に見透かされるみたい」


「何を?」


「それは言わない。今は秘密」


 女子の考えていることって、時々、わからなくなる。でも咲良が見舞いに来てくれて嬉しいよ。


 僕は咲良ににっこりと笑った。咲良は目を逸らせて、体をモジモジさせている。


「一応、蒼のノートを探してね。蒼が寝ている間の授業のところをノートに書いておいたの。汚い文字だけど、許してね。机の中にあった勉強道具一式は鞄の中に入れて、鞄はベッドの下に置いてあるから」


 僕は手を伸ばして咲良の手を取って「ありがとう」とお礼をいう。咲良は立ち上がると、僕の寝ているベッドに抱き着いてきた。そして布団に顔を埋める「本当に何もなくてよかった。心配したんだぞ。馬鹿」と呟いた。そして、布団から離れる。


「私、もう行くね。日曜日の約束、忘れないでね。たぶん瑞希先輩、廊下で待ってると思うから、そろそろ交代する。じゃあね。また、明日~」


 そう言って、咲良は保健室から出て行った。


 入れ替わりに瑞希姉ちゃんが保健室に入ってくる。瑞希姉ちゃんは布団の上にダイブして、僕の体にしがみ付いて、号泣している。僕は瑞希姉ちゃんが泣き止むまで、瑞希姉ちゃんの髪をゆっくりと何度も撫でた。


「なんでも、がんばり過ぎるんだから。あんまり無茶しないで、体が強い訳じゃないんだから。お姉ちゃん、心配でたまんなくなるよ。今日なんて授業が手に着かないから、ここにずっといたんだから」


「瑞希姉ちゃん。心配かけてごめんなさい。悠にもペースを守れって言われていたのに、最後の2周で無茶をした僕の失敗。そのせいで心配させてゴメンね。なんでも言うことを聞くから許して」


「なんでも言うことを聞いてくれるのね。言葉は聞いたわよ」


 瑞希姉ちゃんが布団から顔をあげて、にっこりと笑った。僕は自分が失敗したことに気づいたけど、遅かった。


 瑞希姉ちゃんは僕の手を取って、僕をベッドに座らせてくれた。そして隣に瑞希姉ちゃんが座る。


「保健の先生が戻るまで、一緒に座ってよ。保健の先生が来たら、2人で一緒に帰ろうね」


 瑞希姉ちゃんはそういうと僕にもたれかかって目を瞑った。すぐに寝息が聞こえる。随分疲れさせてしまったようだ。僕達は保健の先生が保健室へ入って来るまで2人で寄り添っていた。