「だいぶよくなったみたいですね。よかったです。」

胡桃さんの声が先日薬局へ来たときとはあきらかに違うので、私はそう言った。
もう喉の調子はよさそうだ。

ちょっと低くて渋い声だったんだぁ。

「おかげさまで。まだ咳は出るけど。あの喉にシューってやるやつ、あれ効きますね。もっと早く病院にかかればよかったな。」

喉にシューって。
吸入薬のことね。
表現が面白くて、思わず笑ってしまう。

「そうですね、結構ひどい症状でしたよね。」

「治りが遅いのは歳のせいかな?」

「いえいえ、そんなことは。」

私は処方箋を思い出してみる。
確か30歳と書いてあった。
私よりも3歳年上だけど、まだ“歳のせい”とか言う歳ではない。