私のアパートは駅から徒歩5分だ。

「あの、ここです。」

駅近くが魅力な物件なのに、今日は近いことに文句が出る。

もう着いてしまった。
早いよ、早すぎる。

足が止まると同時に、繋がれた手もほどかれた。

ううっ、何だか寂しい。
とたんに冷えてくる手。

この短時間でどれだけ欲張りになったんだろう。

もっと手を繋いでいたい。
もっと一緒にいたい。
別れるのが惜しくてたまらない。

そんな私の口からは勝手に言葉が紡ぎ出されていた。

「あの、よかったらお茶飲んでいきませんか?」

言ってすぐに口ごもる。
もし断られたらどうしよう。
そういうリスクを考えずに発言してしまった。

胡桃さんはじっと私を見据える。