「症状はどのような感じですか?」

患者さんの症状を聞く。
これは薬剤師にとって重要な仕事だ。
副作用を初期の段階で発見したり、薬やサプリメントの飲み合わせの確認をしたり。
患者さんの安全を守るために重要なことなのだ。

「…喉が痛くて…咳が酷いです。」

声を出すのも苦しそうに、胡桃さんは言う。
確かに、ひどくかすれた声。
風邪をこじらせたのかな、という印象だ。

処方箋には気管支を広げる吸入薬が明記されていて、私はそれを説明する。

「こちらの吸入薬は使ったことありますか?」

「…ないです。」

私は説明書を広げて、見本の吸入器を使って説明する。
その間、胡桃さんは時折咳をしながらも返事の代わりに何度も頷いた。

「---、最後にうがいをしてくださいね。」

説明書を折り畳んで吸入器と一緒にチャック付きの袋に入れる。
そこで改めて胡桃さんを見た。

背の高い胡桃さん。
私はいつもと違う目線の高さに、僅かながら胸がときめいた。