オレは、リゼットをお姫様抱っこで抱えて、歩き出した。近くに山小屋らしきものが見えて、とりあえずそこを目指してゆっくりと歩いていく。無職で体力は激減しているが、彼女の体温と吐息を感じて、不思議と力が湧いてきていた。

「リゼットちゃん、オレが君を守ってやるよ。どんな奴がオレと君の前に立ち塞がっても、絶対に倒してみせる。オレが使えるようになったスペルの知識を駆使してね。今は頼りないけれど、いつかは君に本当の笑顔を取り戻させてみせる!」

 オレは決意を新たにして、彼女を連れて山小屋に辿り着いた。そこに辿り着いた時には、オレの額にも汗がにじみ出ていて、人間1人を運ぶのは大変だという事が分かる。可愛い女の子とはいえ、抱き着いてきてもらわないと抱えるのはキツイ。

 オレは、必死の思いで山小屋の扉を開けて、リゼットを抱えたまま中に入る。山小屋の中は綺麗に清掃されており、定期的にメンテナンスされている事がわかる。柔らかいダブルベッドも備わっており、今日1日はここで休む事が可能だった。

「どうやら、山小屋は緊急避難用に作られた場所らしいな。夏場は、あまり使われていないが、冬場は遭難した時のための設備が整っているようだ。これで、リゼットちゃんを介抱してあげる事ができるぞ。まずは、触診をして、怪我がない事を確認しないと……」

 オレは、彼女をベッドに寝かせて、苦しくないように服のボタンを外しておいた。多少乱れた感じで服をはだけさせているが、ブラジャーやパンティーまでは見えていない。彼女の呼吸は荒く、息をするのが精一杯といった感じだ。

 触診という事を口実に、リゼットのオッパイを触り始めた。さすがに、服やブラジャーを外して触診するのは刺激が強過ぎる。まずは、服の上から優しくオッパイを揉む事にした。服の上から触っていると、服やらブラジャーやらがズレる。

「うわぁ、これが女の子のオッパイ。柔らかい。手に吸い付いてくるかのような柔らかさだ。ちょっと触れただけでもぷるんぷるんと揺れていた。ちょっと勇気を出して揉んでみるか。何かしらのアイテムをオッパイの間に入れているかもしれないし……」

「うっ、ん……」

 オレは、彼女の深い谷間に指を滑り込ませて、アイテムがないかを確認する。鍵や宝石、重要なアイテムをここに入れている可能性はゼロではないのだ。指を谷間に滑り込ませると、彼女の体がピクンと反応した。どうやらアイテムはないようだ。

「うむ、鍵や重要なアイテムはないようだな。ここに物を入れっぱなしにしていたら、圧迫して痛いから確かめたのだが……。次は、オッパイを全体的に揉んでみよう。何か体の異常があれば、それで彼女の怪我などは分かるはずだ」

「あん、あっ、アレクシオス……。どうして、私を殺そうとするの……」

 オレは、彼女のオッパイを均等に揉んでみた。甘い吐息が漏れたかと思うと、元カレの名前を口にした。他の男、あの赤い軍服の男の名前を呼んだ事で、オレも少し怒りを感じていた。それでも、涙を流す彼女の顔を見て、可愛そうという感情が押し寄せてくる。

「もう、そんな男の事は忘れろ。オレがお前を守ってやるから……」

「うん……」

 彼女は意識していたわけではないが、オレの言葉に反応して返事をしてくれた。その言葉を聞いた瞬間、堪らなく彼女を愛おしく感じた。このまま、無茶苦茶にしてしまいたい。そんな衝動が湧いてきたが、さすがにオレは理性を働かせる。

「はあっ、はあっ、はあっ、リゼットは安心して寝てるんだぞ。ここで、彼女を襲う事は、男としてのモラルに反する。キスだって、彼女が同意しないとしちゃいけないんだぞ。落ち着け、オレ……」

 オレは、彼女を抱きしめたいという衝動をなんとか耐えた。キスしたいという衝動にも駆られて、彼女の唇を触る。指で彼女の唇に触れてみると、とてつもなく柔らかかった。そこから甘い吐息が漏れ出しているのだ。

「くう、可愛い……。リゼットが超絶美少女で良かったよ。今なら、なんとか性欲を制御する事ができる。人間は、超絶に可愛い物や美しい物を見ると、壊しちゃいけないという使命感にも駆られるからな。でも、両想いになった時は、覚悟していてくれよ?」

 リゼットは、安心して眠っていたようだ。もう寝言も発せず、オレの言葉に反応する事はない。オレは、紳士的なイメージとして、彼女の額にキスする事にした。唇を奪う事は紳士的ではないが、額にキスなら騎士(ナイト)のようにカッコイイと感じていた。

「お休み、ハニー♡」

 オレは、リゼットの額にキスしようとすると、ベッドの横にある鏡に自分の顔が映る。顔自体はそこそこイケメンだと思うが、格好は思い描く騎士(ナイト)の格好ではない。アレクシスを超える男になる以上、それ相応の衣装が必要だと感じていた。

「うーん、さすがにシャツとトランクス姿は格好悪いな。せめて、軍服でもあれば、騎士(ナイト)に見えるんだが……」

 オレは、彼女をベッドに寝かせて、クローゼットから衣装を探す。山小屋といっても彼女が定期的に管理していた王族御用達の緊急避難所だ。紺色の軍服が有ったので着ることにした。上はコートのような衣装だが、下がズボンで男性物だと分かる。

「へー、女性物のワンピース姿の軍服もあるんだな。リゼットには、この青色の衣装を着て貰いたい。これから敵の軍に命を狙われる事になるから、変な格好はさせられない。しかし、このくらいのワガママは許されるだろう」

 オレは、黒色のコートに、紺色のスカートを履いてもらう事にした。今の衣装もセクシーで可愛いが、敵と遭遇しないようにするには目立たない格好の方が良いだろう。オレから見て可愛く、質素な物を選んでおいた。

 オレは、軍服に着替えて、リゼットに近づく。スヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。オレは、毛布を優しくかけて、彼女の手を胸の位置に移動させる。柔らかくて白い手が、彼女の大切なオッパイを守っている。オレは、彼女の額に優しくキスをした。

「うおおおおお、軍服姿でお姫様の額にキスするオレ、カッコイイ! 唇は、いずれ両思いになってからキスするから、それまで大切にとっておいてくれよな!」

 リゼットのファーストキスがまだである事を願いつつ、オレは静かに彼女の寝ているベッドから離れる。夕食の準備をして、彼女に喜んでもらいたいと考えていた。料理は得意ではないが、愛情を込めて作れば彼女も喜んでくれるだろう。

「味噌汁とご飯くらいならできるな。米とか、材料があってくれると助かるが……」

 オレは、隣にある食糧庫に行ってみる事にした。通路を通じて繋がっているが、何かしらの食物は置いてあるようだった。そこには、鍋や釜、お米なども置いてあるようだ。保存の利く食品ばかりだったが、使えそうな物も多数見つかる。

「うーん、味噌はないけど、お米と野菜は置いてあった。なら、炒飯(チャーハン)にでもして、リゼットちゃんに振る舞ってあげよう!」

 オレが倉庫と山小屋の間の道を通って帰ろうとすると、数人の黒いローブを着た魔術師が彷徨いていた。どうやら、オレとリゼットがここに隠れている事がバレたらしい。それでも、襲ってくる事はなく、機会を伺っていた。

「ふむ、オレが魔法を使える事を知って、慎重になっているのだろうか? 確かに、基本的なスペルの唱え方は覚えた。後は、天才的なオレの頭脳と組み合わせれば、最強の魔術師となる事ができる。慎重になるのも納得できるな。司令官はキレ者だな、たぶん」

 オレは、スペルの基本的な事を覚えただけで粋がっていた。だが、敵の魔術師が山小屋を取り囲んでいたのは事実だ。そして、オレを警戒しているのではなく、王族がここまで来るのを警護していたようだ。オレとリゼットの前に、新たな脅威が迫っていた。