わたしは洗った顔をタオルでふくと、ダイニングへ向かった。

 母が笑顔で出迎える。


「さー、もうできてるわよー。早く座って座って」

「うん……。あ、これ青司くんにもらった。はい」

「え? なにこれ。ケーキじゃない!」

「そう。ご家族にって。わたしはもうあっちでいただいたから」

「へえ~。……まあまあ」


 青司君にもらったケーキを母に渡すと、案の定ニヤニヤされた。

 わたしはそれを無視してテーブルに着く。


 ケーキをしまうために母は一旦キッチンに戻ったが、すぐに大きな金色の鍋を持ってきた。テーブル上の鍋敷きの上にそれをドンと置く。

 そしてもったいぶりながら蓋を開けると――。


 中からは、透明なだし汁に浸かった大根や、ちくわ、昆布、こんにゃく、ゆでたまご、ちくわぶ、それからウインナーなどが現れた。

 目の前にはすでにご飯とお箸、それから中くらいの取り皿と、からしのチューブがある。


「さ、どうぞ。召し上がれー」

「はーい。いただきまーす」


 母の合図で、わたしはさっそくお箸を取る。

 でも鍋の中のお玉で、まずは具をすくうことにした。
 選んだら、すぐに母とバトンタッチ。


「はふ……」


 最初は大好きなちくわぶからいってみる。

 甘いケーキの後だが、だからこそ適度なしょっぱさが身に染みた。

 だしがよく効いている。

 ちょっとからしをつけるとまたうまい。


「は~、おいし~」


 じんわりとした温かさに酔いしれていると、母がじっとわたしを見つめている。