「お、お、おまえ!なんてことしてくれたんだ!
帰らなきゃ!
この宝石を使って、元の世界に帰らなきゃ…!」

フレイザーが紫色の宝石に手を伸ばしかけた時、エリオットがそれを制した。



「駄目だって!
それじゃあ、僕はどうなるのさ?
一生、このまま女の子として生きていかなきゃならないのかい?
しかも、魔法が使える女の子だよ!」

「良いじゃないか。
世の中には、わざわざ女性に性転換する人だっているんだぞ。
高い金出して、危険な手術して…
おまえは、その手間なしに女になれたんだからラッキーじゃないか!」

「いいかげんなこと、言うなよ!
僕は女の子になりたいなんて思ったことないよ!」

「でも、俺も一気に年取っちゃったんだぜ。」

「良いじゃないか、年くらい!
君は元々、早く大人になりたかったんだろ!」

二人は突然の思いがけない出来事に、お互い感情的になっていた。
それも、現在の状況を考えれば無理からぬこと。



「フレイザー…この宝石の使い道はもう少しゆっくり考えようよ。」

「ゆっくりったって…もう暗くなって来たぞ…
そうだ、エリオット!
俺達の家はどうなってるんだ?」

「それは…」

「行ってみよう!」

「あ、待ってよ、フレイザー!」

エリオットは駆け出したフレイザーを追いかけた。
あたりの風景はなんら変わりない。
森を抜けるまでに、先程よりずっと小さいモンスターが現れたが、そいつもまたエリオットが魔法で倒した。



「あ……」

森を抜けた二人の目の前に広がっていたのは、いつもとはまるで違う風景だった。
見慣れた建物は何一つそこにはなかった。