(もう駄目だ!)



フレイザーは覚悟を決め、堅く目を閉じた。
その時、激しい雷鳴が轟き、その直後、断末魔の叫びがフレイザーの耳をつんざいた。



(な、な、なんだ?!)

フレイザーは恐る恐る目を開く…



「う、うわっ!!」



フレイザーの目に映ったのは、黒焦げになったモンスターと、つえを高く掲げたまま呆然として立ち尽すエリオットの姿だった。



「おい、エリオット!
まさか…おまえがやったのか!?」

「ぼ…僕…必死で…」

「必死でって…何をどうやったんだ!」

「だから…なんとかしないとって思ったら…
僕、なんだかわからないけど、勝手に何か言ってて…
そしたら、雷が…」

「そうか…!俺が、エリオットを魔法使いにしてくれって願ったから…
すごいじゃないか、エリオット!
でも、それなら、俺も何か特殊技能を持った大人になれば良かったな。
あ、そうだ、宝石はあと1つあったんだ!」

「よせ、フレイザー!
それはそんなことに使っちゃいけない!」

「なんでだよ…
あ、そういえば、さっきもこの宝石に頼めば良かったんだよな。
あのモンスターを倒してくれって。」

「そんなことしても無駄だよ。」

「なんでだよ?」

「だって、モンスターはあいつだけじゃないから…」

「あいつだけじゃない?どういうことだ?」

「どういうって…だって、ここはモンスターがいっぱいいいるミラクルファンタジーみたいな世界なんだよ。」

「ミラクルファンタジー?なんだ、それ。またゲームか?
なんで、ここがそんな世界なんだよ。
そういえば、そもそもなんであんなモンスターがいるんだ?」

「だって…僕が願ったから…」

「は?」

「僕が、赤い宝石を持って、ミラクルファンタジーみたいな世界で暮らしたいって言ったから…」

フレイザーがその言葉に息を飲む。



「まさかとは思うが…あの赤い宝石が崩れたのは、その願いが叶えられたからだっていうのか?」

エリオットは黙って頷いた。