「なに、それ?」

エリオットが興味深そうに、フレイザーの肩越しに光の元をのぞき込む。



「あ!」

光が照らしていたものは、細長い木箱だった。
木箱とはいえ、とても頑丈そうな木で出来ており、さらに鍵も掛けられている所をみると、中に納められているものは価値のあるものだろうと二人は推測した。



「エリオット、何か固いものはないか?
鍵を壊すんだ!」

「その懐中電灯はどうだい?」

フレイザーは、うっかりしてた…というような顔つきで頷くと、木箱の鍵を懐中電灯で何度か叩く。
鍵は錆びついていたためか、呆気ない程簡単にはずれた。



フレイザーが蓋をもちあげる…
その中は五つに仕切られ、その仕切りの中にはカラフルな五色の宝石が入っていた。



「すごいじゃないか、フレイザー!
一体、いくら位になるんだろう?
……あれ…?」

エリオットが赤い宝石に手を伸ばし、部屋を出て宝石を光の下に差し出した。



「なんだ、これ?ガラスじゃないか?」

フレイザーは箱を持ち、明るい所で見ようとエリオットを外へ出るよう促した。



「うん、やっぱりガラスだよ、これ。
だよなぁ…こんな大きな宝石があるはずないもんな。ちぇっ。」

エリオットのそんな呟きには耳を貸さず、フレイザーは箱の裏に描かれた文字とも模様ともよくわからないものを真剣にみつめていた。



「かすれてよくわからないけど…これは、確か『願い』…」

「願い?
何?それじゃあ、この宝石に願いをかけたらそれが叶うとか…?」

そう言って、エリオットは噴き出した。



(なんだよ、いつも大人びたことばっかり言ってる癖に、そんなこと信じてるのか?
フレイザーって、意外とガキっぽいんだな!)



「じゃあ…そうだな。
僕は、こんな世界じゃなくてミラクルファンタジーみたいな世界で暮らしてみたかったな。
文明は今よりずっと低いけど、まだ魔法があって、モンスターや獣人たちもいて…
あ……」

エリオットの手の中で、赤い宝石が粉々に崩れた…



「あぁ!エリオット、なにやってんだよ!」

「何って…僕、何もしてないよ。
勝手に壊れたんだ!」

「そんなわけないだろ!
おまえが強く握ったんじゃないのか?」

「違うって!僕、本当に何にも…」

二人の間に、気まずい空気が流れた。