エリオットには、フレイザーという人物がいまひとつ理解出来なかった。
数年前、フレイザーはこの町に引っ越して来た。
エリオットと同じクラスの隣の席になったことから、なんとなく友達になってしまったものの、二人の性格は正反対だ。
そもそもそんな二人が友達になることさえおかしいとエリオットは考えていた。
フレイザーは、この時代に携帯も持っていなければ、ゲームにもまるで関心は持っていなかった。
携帯どころか、家の電話さえほとんど使わず、エリオットを呼びに来る時はいつもあの小石の合図。



(大昔の恋人同士か!)



エリオットのそんな心の叫びにも少しも気付くことなく、フレイザーの呑気な鼻歌は止まらない。
そのうちに苛々している自分が馬鹿馬鹿しく思え、エリオットはふっと笑みを漏らした。



「どうしたんだ?
気持ち悪いな、思い出し笑いなんてして…」

「思い出し笑いじゃないよ。」

「じゃあ、なんだよ。」

「……別に。」

「わぁ…感じ悪い奴!」

そんな他愛ない話を交しながら、やがて、二人はフレイザーのお気に入りの遺跡に着いた。
森のはずれのその場所には、所々に廃屋の跡らしきものがあるだけ。
フレイザーが何を根拠にこの場所を…何の遺跡だと考えているのかもエリオットは知らない。



「あれ…?どこ行くんだ?」

いつも腰をかけてうだうだと話をする場所を通り過ぎ、フレイザーはさらにその奥へ歩いて行く。



「今日は特別なものを見せてやるよ!こっちだ!」

エリオットは、フレイザーの言うその特別なものに興味があったわけではなかったが、ここまで来たらつきあってやるしかない。
そう思い、彼の後を黙って着いて行く。



「うわぁ…」

エリオットは、思わず声を漏らした。
フレイザーが案内したその場所には、レリーフのほどこされた太い柱の欠片が転がっていたのだ。



「な、俺の言うことは間違いなかっただろ?
これはこの前みつけて掘り出したんだけど、ほら…ここ、見ろよ。
ここだけ磨いてみたら、こんなに綺麗に…やっぱりこれは大理石だった。」

「大理石?!」

フレイザーの指差した先は、一部分だけがしっかりと磨きこまれ、その柱本来の白さが際立っていた。



「そうさ、きっとこのあたりには、昔、神殿みたいなものがあったんだと思うんだ。」

「神殿?!」

エリオットの脳裏には、以前、何かのテレビ番組で見た月桂冠を被った古代人と神殿の風景が思い浮かんでいた。