「何するんだ、そんなもん。」

「俺、考えたんだけどさ。
魔法使いって、箒に乗って空を飛んでるシーンがよくあるじゃないか。」

「シーン…?」

「いや…なんでもない。
それでだ、この板切れに三人が乗ってだな。
風の力を借りて、町まで飛んで行くってのはどうだ?
ラスター、町の方向はわかるんだろ?」

「あぁ、もちろん。
一番近いヨギラの町はこっちだ。」

そう言って、ラスターは町の方向を指差した。



「よし、決まりだ!
じゃあ、エリオット、後は頼んだぜ!」

「えっ、そ、そんな…」

「さっさとやれよ!」

一番前にエリオット、その次にフレイザー、一番後ろにラスターという順番で板切れに跨ると、エリオットは呪文を唱え始めた。
すると、どこからか吹き始めた風がそよぎ、三人の乗った板切れがゆっくりと浮かび上がる…



「やった!」

フレイザーがそう叫んだ瞬間、板は大きく傾き、フレイザーとラスターを振り落とし、ものすごい勢いで飛び去った。



「いって~!」

「こらー!エリオット!
俺達を忘れてるぞーーー!」

しばらくすると、板に乗ったエリオットが戻って来た。



「なんとなく、操り方がわかった気がするよ。」

「そうか、それは良かった。
今度は振り落とされないようにみんなしっかり掴まって行こうぜ!
それと、ラスター、おまえは前に行け。
俺が一番後ろにいた方がバランスが良さそうだ。」

「え…俺…一番後ろで良いよ…」

「それじゃあ、バランスが悪いんだって!
さ、早くしろ!」

ラスターは、妙にエリオットとの間を空けようとしていた。



(はは~ん…こいつ、エリオットのことを女の子だと思って…)



「な、なんだよ!
何、くすくす笑ってんだ?」

「何も笑ってないよ。
ラスター、もう少し前に詰めてくれよ。
俺、落っこちそうだ。」

フレイザーは、ぐいぐいとラスターを押しやった。



「しっかりつかまったか?
ようし、エリオット、やってくれ!」

「うん!行くよ!」

エリオットが呪文を唱えると、吹きあがる風と共に板きれがゆっくりと浮かび上がり、次の瞬間、ものすごいスピードで飛び出して行った。