「じゃあ…あんたにはピサカでも捕まえてもらおうか。」

「ピサカ?」

ラスターに指示されたエリオットは、救いを求めるような視線をフレイザーに投げ掛ける。



「なんだ、ピサカのことも覚えてないのか?
このあたりでも何度か見かけたぞ。
あいつの肉はけっこううまいんだ。
だが、あいつらはものすごくすばっしこいからな。
罠でも仕掛けないとなかなか捕まえられない。
でも、あんたの魔法があればなんとかなるだろ?」

「ピサカ…って、もしかしたら、あの耳が短いうさぎみたいな奴か?」

「うさぎ?
なんだ、それは…」

「あぁ…そっか…」

この世界の生物は自分達の世界の物とは違うのだと、フレイザーは気が付いた。



「ぼ…僕、やだよ。
生き物を殺して食べるなんて…」

「生き物って…ピサカはモンスターだぜ。
そりゃあ、金持ち達はあんなもん食べないかもしれないが、俺達は貧乏だからな。
うまいとかまずいとか言ってられなかった。
……なるほど。あんたはきっと金持ちの娘なんだな。
それでそんな甘っちょろいことを…
……と、なると…」

ラスターはフレイザーの全身をまじまじとみつめた。



「あんたは、この娘の家の使用人か?
うん、きっとそうだ、
そうでなきゃ、いくら魔法使いだとはいえ、こんな女の子が一人で旅をしてるわけないもんな。」

「し、使用人?」

エリオットは、また下を向いてくすくすと肩を揺らして笑う。



「だけどな、お嬢ちゃん、そんなこと言ってる場合じゃないんだ。
町まではまだ遠い。
一番近い町まででも、どんなに急いでも三日はかかる。
その間、何も食べずにすごすつもりか?」

「だって、僕…
あ、そうだ!転移の魔法はどう?
町まで一っ飛び!」

「それが遣えるなら、それでも構わないが…
確か、転移の魔法は一度行った所しか使えなかったんじゃないか?」

「そんな決まり事があるのか!
……じゃ、駄目だな。」

「僕…いやだよ!
モンスターでも、殺して食べるのだけはいやだ!」

「なら、あんたは食べなくて良いさ。
俺達だけが食べるから、獲ってくれよ!」

「それもいやだ!」

「勝手なこと、言うんじゃない!」

「二人共、そう熱くなるなよ。
要は、町に行けばなんとかなるんだから…」

そう言いながら、フレイザーはあたりを灯かりで照らし出す。



「おっ!良いもんがあった!」

フレイザーが手にしたものはさほど大きくはない一枚の板切れだった。